今年で2回目となる「高円宮記念日韓交流基金」の顕彰式が行われ、韓日の4団体が顕彰された。各団体の事業内容と代表の喜びの声を紹介する。
◆「大きな岩が同じ方向へ」 高円宮妃殿下のおことば◆
宮様は国と国との友好関係は、人と人との交流が基本というお考えをお持ちでした。
宮様が亡くなられたのは2002年。日本と韓国が力を合わせて成功へ導いたFIFAワールドカップ開催の年です。両国が共同で一つの目標に向かって歩み寄り、世界的に影響力のある大きなイベントを実施したことを殿下は、日本と韓国の間の新しい関係、新しい交流の大きなきっかけとお考えであられました。私は殿下にお供して2002年のワールドカップの際、大統領のご招待で公式に韓国を訪問いたしました。帰国後、殿下は今までお互いに違った方向から押していたため動かなかった大きな岩が、一緒に同じ方向から押したので、動き始めたと仰いました。後はそれをいい方向へ押し進めていく努力を怠らないようにしなければならないとのお考えをお持ちでした。
この高円宮記念日韓交流基金の創立は、いい方向に進めていく一つの手段として必要なものであり、皆様のご支援のおかげで、着実に成果を生みつつあると感じております。
二年目ということもあり、顕彰事業が定着するかどうか心配しておりましたが、今年もまた多くの推薦、応募があり、その中から本当にレベルの高い交流事業が選考されたと思います。高円宮賞を差し上げる4件の交流事業は、いずれも地域に根ざした息の長い活動で青少年の教育と育成、両国文化の紹介と理解、さらにはスポーツ競技を通じた友好親善に大変貢献している素晴らしいものです。こうした活動が市民の皆様の行動と努力により、静かに続けられてきたことに私は強い感銘を覚えます。国と国をつなぐのは結局は人です。草の根交流の大切さをつくづく感じている次第です。
◆サッカーで草の根交流◆
北海道旭川地区サッカー協会「日韓親善少年サッカー交流事業」
韓国の姉妹都市である水原市とのサッカー交流で、ホームステイも併せ実施している。小中学生の交流試合を交互に開催し、20年間で2200人を超える青少年が参加している。
太田英司・北海道旭川地区サッカー協会会長は、「今後も草の根で民間交流を続けていくということを忘れずに活動を進めていきたいと思います」と述べた。
◆初等授業交流で相互理解を促進◆
福岡県田川市立後藤寺小学校「韓国吐月初等学校との国際交流教育」
福岡県田川市で行われている韓国慶尚南道・昌原市の吐月初等学校との教育・文化交流。田川市立後藤寺小学校の生徒と教師、さらには保護者を含めた交流事業で、13年間継続している。
中野高保・田川市立後藤寺小学校校長は、「同じことを続けることは難しくて、財政的にも厳しいですが、賞を頂いたことを、今後の交流の励みにしていきたいと思います」と述べた。
◆韓国で俳句普及に尽力◆
韓国俳句研究院「日本の俳句普及活動」
韓国・慶州などで行われている日本の俳句普及活動を行っている韓国俳句研究院。院長の郭大基氏は、韓国の大学で日本語を教えていた頃に俳句に出会い、芭蕉をはじめとする日本の俳句に傾注し、1998年に俳句研究会を設立。韓国の人々に俳句を教える活動を始めた。
郭大基・韓国俳句研究院院長は、「これからも韓日両国の俳句を通して、文化の民間交流や青少年などへの広がりのために頑張りますので、ご協力お願い申し上げます」と喜びを語った。
◆顔が見える交流を実施◆
サンブリッジ国際交流協会「日韓子どもカササギ交流事業」
福岡県柳川市で行われている「日韓子どもカササギ交流事業」。小学生による学校訪問、授業参加や、ホームステイ・研修旅行等を通じて体験学習を行っている。竹井理事長は、元々海外青年協力隊などで国際交流をしており、遠い国は出かけていくだけで喜んでもらえる、逆に近い国ほど交流は難しいという考えのもとに韓国との交流を始め、10年が経つ。
竹井清・サンブリッジ国際交流協会理事長は、「私は近い国をともかく大事にしようと思いました。仲良くしながら競争しよう。日本と韓国が一緒になったら私は世界を動かせると信じています」と述べた。
◆新しい日韓関係を 渡邊泰造・高円宮記念日韓交流基金理事長◆
高円宮記念日韓交流基金は、日本と韓国との間の草の根交流を支援するために両国企業、団体の皆様のご協力によって2008年12月に発足しました。両国の友好にご尽力なされた故・高円宮殿下を記念しまして教育、文化、スポーツを中心とする青少年交流、あるいは学術交流などの事業の顕彰、あるいは助成を通じて未来志向的な日韓関係を構築するということを目的として掲げています。
顕彰事業は、財団の中心事業です。日本と韓国の有力な団体から推薦いただいた多くの交流事業の中から長年にわたり活動し、顕著な功績を上げた事業を日韓の有識者で選考し、高円宮妃殿下から名誉ある高円宮賞を贈呈するものです。
◆意義ある民間外交 権 哲賢・駐日韓国大使◆
意義ある民間交流事業を発掘して世に広く知らせ、このような事業を拡大、発展を支援する点において高円宮記念日韓交流基金の褒章事業は今までになかった特別さと意義があります。
国家間の利害が度々衝突する政治と経済分野と違い、相互理解を図りやすい教育、文化、スポーツ分野での交流を通じて互いの良いところを学び、韓日両国間の友情と相互理解を高めていくことが、共存、共栄の未来を開くものと言えます。
今年も日本と韓国から、多くの推薦があったと伺いました。推薦された方ひとりひとりが、民間外交官として使命感を持ち、交流事業のひとつひとつが両国を結束させるという姿勢で交流活動に積極的に参加されたと思います。
◆草の根交流を促進 村田直樹・外務省広報文化交流部部長◆
最近は日韓で年間500万人という人々が往来する中、J―POP、K―POP、韓流、日本食などが、両国間の文化交流で注目されていますが、日本と韓国との間には2000年にわたる長い交流の歴史があります。
今日、未来志向の日韓関係を支える青少年の交流は、両国にとってますます重要となっています。
そうした中で、教育、文化、スポーツ分野における青少年の草の根交流での功績を顕彰する高円宮記念日韓交流基金の事業は、大変意義深いものであると考えています。
引き続き国際交流基金や大使館、総領事館の事業を通じて幅広い分野での日韓文化交流を実施して参りたいと思います。
◆受賞者の熱意伝わる 小田島雄志・東京大学名誉教授◆
「昨年の第1回目は日韓間の交流が幅広く見えたが、今回は俳句の交流など、より具体的に見えてきた。実際にいろんな交流をやっている。
素晴らしい交流が多かったので受賞事業をもう2つか3つ増やせればと思った。今後もっと広げていいのではないか。1回目は手探りだったが、勝負は来年の3回目だ。受賞者の言葉の熱意がわれわれにも伝わってくる」
◆サッカー交流に値打ち 川淵三郎・日本サッカー協会名誉会長◆
「今回の選考では、俳句を教えられている先生がとても印象深かった。サッカー界の一員としては、北海道の旭川という遠隔地で20年間もサッカー交流やってきたことは値打ちがあると思う。交流人数も多く、サッカー交流は多いが一際目立つ存在だ。いままで聞いたこともない交流もあり、このような顕彰を通じて刺激を受ければ幸いだ」
◆日本文化伝える俳句 安西祐一郎・慶応義塾前塾長・学事顧問◆
「大変長い年月にわたって、活発に交流を続けてこられた団体が多いのが大きな特徴だ。俳句は、韓国に日本の文化を伝えるという意味で素晴らしいことだと思った。また、大きな団体ではなく、いろんなバラエティーがあって良かった。昨年の選考も甲乙つけ難い状態だったが、まだまだ日韓の交流はいろんなところで盛んに行われていると思う。基金のプログラムがもっと広く知られると嬉しい」
◆陰の主人公を顕彰 陳昌鉉・バイオリン製作者◆
「韓日は過去にひきずられやすいが、心の絆は、国益とか政治に左右されてはだめだ。人間と人間、民族と民族、国民と国民が心を通わせ、友情や文化交流に役立てる。そういう陰の主人公がいるものである。両国の友情のため頑張った人には普遍性がある。この基金はそういう人を顕彰する意義がある」
◆推薦したい団体多い 張本勲・元プロ野球選手◆
「援助をもらわずに民間レベルで、しかもホームステイしながら、韓国の文化、日本の文化を子どものころから学び合うことで、将来手をとりあっていい国をつくってくれるのではないだろうか。長年交流を続けている人も多く、内容的に非常にいいものがある。まだまだ推薦したい団体が沢山ある」