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2011/01/28

<韓国文化>実在の女性受刑者合唱団を描く

  • 実在の女性受刑者合唱団を描く①

    主演のキム・ユンジン(中央)(c)2010 CJ Entertaiment Inc.All Rights Reserved

 実在する女子刑務所合奏団をモデルにした韓国映画『ハーモニー 心をつなぐ歌』(カン・テギュ監督)が、日本公開中だ。韓国では300万人の観客動員を果たした話題作で、映画『シュリ』の人気女優、金允珍が主演している。金允珍と姜旲奎監督に話を聞いた。

◆母の愛、感じてほしい ――金 允珍(キム・ユンジン、女優)◆

 主人公のジョンヘは受刑者だが、コミカルで積極的な女性の役だったので、演じていて楽しかった。

音痴の設定は、監督と相談して決めた。私自身、歌は得意ではないので、音痴を演じるのは難しくなかった(笑)。

 ジョンヘは孤児出身で、子どもを預かってくれる親類が外にいないので、18カ月間だけ刑務所内で子供と過ごすことが許されるが、期限を過ぎたら養子に出さないといけない。私は昨年結婚したが、まだ子供はいないので、母親とはどういうものなのか、想像しながら演じた。

 オーバーアクションでジョンヘを演じたが、それは悲しいシーンが多いので、子供と一緒にいるときは特別に幸せであることを強調したかったからだ。これまでは戦士女性の役が多かったが、今回のコミカルな演技を見て、新境地を開いたと評価してくれる人が多かったのは光栄だ。

 ジョンヘは獄中という絶望の中でも、ひたむきに、そしてたくましく生きている。絶望から希望を見出す実際の受刑者の勇気に触れ、自分も勇気を得ることができた。全体のチームワークで一つのものを作りあげる、題名通り”ハーモニー”の大切さを体験することができた。彼女らの姿に観客が共感してくれればうれしい。

 また、この映画は家族愛とともに、死刑制度についても考えさせる作品になっている。私は死刑制度には反対なので、ラストシーンの描き方がよかったのかどうか、監督と何度も話し合った。監督はあのエンディングにしたい意図があったようだ。

 私は幼い頃、米国に移民として渡り、現在は米国と韓国で女優をやっているが、自己のアイデンティティーについてずっと考えてきた。韓国、米国、どちらにいても異邦人と感じ、孤立感や劣等感があったからだ。

 しかし、『ロスト』という米国テレビドラマに出演したとき、知人から、韓国と米国の観客を同時に感動させることができる唯一の女優といわれ、これまで短所だと思っていたのが長所だと気づき、精神的にとても解放され、その役を演じることができた。


◆家族の再生を描いた ――姜 旲奎(カン・テギュ)監督

 韓国・清州に実在する女性刑務所の受刑者たちで構成された合唱団があり、彼女たちが年に1回、白いドレス姿で音楽祭に参加することを許されているとの話を聞き、その写真を見て映画化を思いついた。

 実際に刑務所を訪ねて何人かの受刑者に話を聞くことができたので、それらをストーリーに生かしつつ、核となる母と子の物語を作り上げた。

 家族とは、母性とは何かををテーマにしたかった。自ら犯した罪によって家族関係を破壊せざるを得なかった女性たちが、家族との関係を修復していくエネルギーを描きたかった。

 金允珍を主役にしたのは、これまで女性戦士のイメージが強かった人なので、逆に今回のようなコミカルやな役を演じてもらったら面白いと考えたからだ。

 彼女は自分なりのキャラクターを作り上げていった。音痴の役についても、どうしたら自然と音痴に見えるか、彼女自身がまず研究し、それに対して私が意見を述べて調整していった。

 ラストシーンについても話し合ったが、私はあの結末にしたかった。

 私は釜山出身だが、釜山では多くの映画が撮影され、幼い時から映画に親しみがあった。除隊してから映画の世界に飛び込んだ。今回は女優中心の映画だったので、次回は男優中心の映画を撮りたい。


■あらすじ■

 実在の女性受刑者による合唱団をモデルに、家族愛を描き、韓国では300万人動員のヒットを記録。18カ月間だけ、刑務所の中で子供と暮らすことが許されているジョンヘ。家族に見捨てられた死刑囚ムノク。哀しい事件によって未来を閉ざされた娘ユミ。誰もが心の傷を抱えながら生きる女子刑務所で、「ハーモニー」合唱団が結成された。「歌の力」が凍てついた女性たちの心を溶かしていく。