第5回大地の芸術祭「越後妻有(つまり)アートトリエンナーレ2012」(大地の芸術祭実行委員会主催)が、来年7月29日から9月17日までの51日間、越後妻有地域(新潟県十日町市、津南町)で開催される。同プロジェクトは新潟から世界に発信する芸術祭で、これまで韓国人作家も数多く出品している。また主要企画の「東アジア芸術村」では、アジアの作家の作品を数多く紹介予定で、作品の公募が先日始まった。
「大地の芸術祭」は、世界でも有数の豪雪地である越後妻有で、世界のアーティスト、文化人、研究者、都市のサポーターと住民が協働し、760㌔平方㍍の広大な大地に約200の現代アートが常設され、3年に1回開かれている芸術祭だ。2000年にスタートし、03年、06年、09年とこれまで4回開催され、来年が第5回目となる。
アーティストが手がけた文化施設は、地域の人々によって運営され、アートを巡る道程では、棚田やブナ林、祭りや伝統行事など越後妻有の風土や文化を五感いっぱいに感じることができる。人々が忘れてかけていたふるさとへの思いを呼び起こし、人と人、人と大地の新しいつながりを感じさせるイベントだ。
特に来年は、東日本大震災被災地域の人々とつながり、助けあって生き、生きる証としてのささやかで明るいお祭りとする予定で、そのため「震災からの復興」をテーマに開く予定だ。
主要企画の「東アジア芸術村プロジェクト」は、津南町上野集落周辺に2000年、蔡國強(中国)のドラゴン現代美術館を設立したことに始まる。ほかにも金九漢(韓国)、管懐賓(中国)、林舜龍(台湾)、李在孝(韓国)、伍韶頸(香港)など多くの東アジアのアーティストが作品を制作してきた。
また作家と住民との協働制作をきっかけに、サポーターや作品を観に訪れる人々と住民との交流や、台湾の村と集落が独自に姉妹協定を締結するなど、新たな地域間交流が育まれてきた。
そして来年の第5回では、これまで制作されてきた作品群を活かし、10年間育まれてきた東アジアの人々との交流を持続的、普遍的に広げていくため、津南町上野集落周辺を「東アジア芸術村」として広く国内外に発信していく計画だ。
そのため「アーティスト・イン・レジデンス」プログラムを軸に、文化交流を促進し、東アジアをキーワードとしたネットワーク構築を目指す。
アーティスト・イン・レジデンス事業とは、上野集落公民館を今後、恒常的な東アジアとの交流拠点とすることを目指し、アジア各都市の大学、文化機関、美術館、ギャラリー、自治体等と連携して、多彩なレジデンスプログラムを展開する事業のことだ。
その第一弾として、レジデンス・プログラムに参加するアーティストを公募する。選ばれたアーティストは、大地の芸術祭のエントリー作家として作品を同地で滞在制作する。滞在制作アーティスト公募の応募締切はことし8月31日で、10月初旬に結果発表する。
www.echigo-tsumari.jp
◆地域に根ざした芸術発信 北川フラム(総合ディレクター)◆
20世紀は都市の時代だが、その中で地方は都市への人口流出が続き、農業は衰退した。美術を見ても、20世紀の現代美術は都市の美術だったといえる。都市が病むと現代美術も病んできた。
そういう意味で地方から美術を発信することは、地方の再生、美術の再生という意味で大きな意義があると確信する。
大地の芸術祭を行ってきた新潟の越後妻有地域は、雪が多く、人口減少が続いている地域だ。そこの住民たちとコミュニケーションを深め、アートについて理解してもらい、空き家や遊休地を使って、町おこしと芸術活動を同時に行ってきた。
来年は東アジア芸術村を津南町に作る計画で、作家の公募活動もスタートした。
新潟の一地域から隣国との交流、美術のグローバル化を進め、20世紀の都市型アートとは違う、地域に根ざしたアートを生み出したい。私のライフワークといえる事業だ。
韓国や在日コリアンの作家にも、ぜひ多数参加してほしい。