「鳥の演劇祭4」が今日から10月2日まで、鳥の劇場(鳥取・鹿野町)を主会場に開かれる。鳥取から演劇を通した国際交流を促進するイベントで、韓国、日本、フランス、フィンランド、英国の全15作品が上演される。中島諒人・同劇場芸術監督に文章を寄せてもらった。
16日から鳥取市鹿野町で「鳥の演劇祭4」が開催される。廃校になった小学校、幼稚園を改造した鳥の劇場を中心に、小さな城下町に合計5つの会場を設け、3週末を中心に上演だけでなく多彩な事業を行う。08年からの毎年開催で、本年で4回目を迎える。
今年は韓国、フランス、フィンランド、英国から劇団を招く。韓国から来るのは江原道の劇団ノトル。09年の2回目以降、毎年海外の劇団を招いており、韓国からは09年に劇団木花、昨年は劇団ティダを呼んでいるので、3年連続の韓国劇団招聘となる。
鳥の演劇祭は、行政、地域住民とも連携しながら開催されている。創造的な活動は東京のような大都市の担うべき役割と考えられ、地方都市はその下請け、消費地という従属的立場に甘んじて来た。地域の自律的発展をただのお題目でなく実現に近づけるために、演劇の祭にどのような社会的役割が果たしうるか、鳥取という人口最小地域で模索している。
この演劇祭がきっかけで、劇団ティダとの3年間の交流プロジェクトも始まった。彼らはソウルを拠点に活動していたが、江原道華川郡に拠点を移した。都市での活動に行き詰まりを感じて地方に移った点、廃校を拠点にしている点など共通点も多く、世代も同じである。今年は鳥の劇場が彼らの本拠地に2週間ほど滞在し、互いにワークショップを行い、地元住民との交流も行った。来年は彼らが鳥取に来る。そして再来年、共同で作品をつくる予定だ。
韓国との交流をもう一つ。BeSeTo(ベセト)演劇祭について。94年に韓国の金義卿氏(韓国国際演劇協会会長:当時)が、中国の徐暁鍾氏(中国戯劇家協会副主席・国立中央戯劇学院院長:当時)と日本の鈴木忠志氏(演出家)に呼びかけたことにより立ち上げられた文化交流共同事業である。北京、ソウル、東京の頭文字からその名前がつけられた。毎年各国持ち回りで開催されている。私は現在、日本の国際委員をつとめている。日本代表委員は劇作家・演出家の平田オリザ氏である。
東京での開催が主であるが、昨年は鳥の劇場でも実施された。「ベセトの『ト』は、鳥取の『ト』」と語る平井鳥取県知事の強力な応援も、鳥取開催の支えになった。韓国からは、作家、演出家の朴根亨氏の劇団コルモッキルが、『そんなに驚くな』という作品を上演し好評だった。鳥の劇場は、韓国と中国から一人ずつ俳優を派遣してもらい、日中韓3か国版でグリム童話の『白雪姫』を上演した。
韓国劇団との交流が多いのは偶然ではない。鳥取は海をはさんで韓国が非常に近い。地図の上で、鳥取を中心に円を描くと、東京とソウルへの距離はほとんど変わらない。
従来の国際交流は、東京を玄関にして、相手国の首都を経由するカタチがほとんどだった。状況は大きく変わり、地域同士の直接の交流が盛んになっている。鳥取県西部の米子空港からは、韓国への直行便が飛び、境港市は韓国の東海市とフェリーによってつながっている。
韓国ドラマのロケが鳥取でも行われ、鳥取の人気カフェが、ソウルに支店を出して好評のようだ。一番近くて親しい外国・韓国との交流が、経済面のみならずコミュニティー全体の新しい発展に寄与することは間違いない。地域のニーズ、期待は高い。
「鳥の演劇祭4」の第2週には、ティダが活動する村の人たち3人が鹿野町に来てくれる。鳥取の我々の支援者にも会ってもらいたいと考えてお招きした。演劇人の交流とあわせて、住民同士の交流も始まろうとしている。都市への経済、文化の一極集中、その一方で地方の衰退。日本も韓国もその状況は変わらないだろう。経済効率優先の従来の価値観は、根本的な変更を迫られている。
日韓交流の優等生と言われる演劇だが、演劇人同士の交流の段階から、地域社会を巻き込んだより広がりのあるものへと深化しようとしている。
■鳥の演劇祭4■
日時:9月16日~10月2日
*韓国劇団ノトル他上演
場所:鳥の劇場
(鳥取県鳥取市鹿野町)
電話:0857・84・3268