話題の美術展が韓国内で相次いで開催される。韓国の伝統家具を紹介する「朝鮮木器と美―権玉淵の所蔵品」展はソウルの北村民芸館で開催中(5月10日まで)。在日作家「高三権 一道」展は、釜山市立美術館(6月14日~7月15日)、光州市立美術館(7月24日~8月26日)、霊岩郡立河美術館(時期未定)と巡回展示される。
「朝鮮木器と美―権玉淵の所蔵品」展が、ソウル鍾路区嘉会洞の北村民芸館で開催。韓国の古い家具などが持つ文化的価値に光をあてた展示会で、画家の故・権玉淵氏・(1923~2011)の所蔵品を公開。5月10日まで開催される。
故・権玉淵氏の自宅は芸術的趣向の高さで知られ、コレクションの伝統木製家具のデザインは古典的でありながらも現代的だ。無駄な装飾を抑え、暮らしの秩序を追求した昔の人の心が垣間みれる。故人は貴族的で宗教的なものを好んだ。
また、鍾路区司諌洞の錦湖美術館で「デザイン、コレクション、フリーマーケット」展を開催。韓国と西欧の古い家具および日常用品のコレクター12人の収集品が展示され、時間が経っても変わらないデザインの価値に触れることができる。
aAデザイン美術館長の金ミョンゴン氏、李ジョンミョン氏など有名なコレクターの収集品で、1950~60年代の箪笥、1920~30年代にフランスで大量生産された鉄製の椅子とテーブルで再現したカフェなど。5月6日まで開催。
これら2つの展示会は国内外の生活用品のデザイン美を紹介している。
高三権氏は1939年大阪生まれ。62年に武蔵野美術大学を卒業し、日本アンデパンダン展、平和美術展などに参加した。また、77年から東京、大阪、パリ、ソウルで招待展を開催している。韓国の著名な画家・李應魯氏と85年に横浜で出会い、その後、李應魯氏は自ら進んで高三権氏の後見人となった。
85年に高三権氏のアトリエで二人が話した言葉が「一道」だ。
不運な国と民族、その現実を背負って生き抜いてきた二人にとって、「一道」とは、人生と芸術への一つの道だった。その道は人生に対する戒めであり、芸術を実践することだった。
李應魯美術館のコン・グァンシク学芸研究士は、「高三権氏は、日本で差別や迫害を受けながら絶えず自分に問いかけた。『なぜ、自分は朝鮮人なんだ?』と。それは自分の正体が何なのかという根本に対する問いかけだった。彼の絵には、いかなる政治性や思想も超越した世界が描かれている。悲痛なほど素直で素朴な人々の姿に、可憐な慕わしさに震える美しい山河の風景に秘められた高三権が描く芸術世界は、ついに『一つ』を成し遂げた祝いの宴の席で感じる大きな喜び」と評している。
高三権氏の作品は、東洋の伝統的な内容が現代的な媒体と技法で表現された世界だ。静物画も風景画も、実物でも実景でもない、作家の心が投影された観念画であり、いつしか帰るべき夢の中の故郷、根本の世界を表現したものである。
高三権氏の韓国巡回展実現に尽力した河正雄・光州市立美術館名誉館長は、「黄土の色調、淡いパステル画調の趣き、洗練された筆致、墨画のような東洋画の情緒を表出した温かな感受性、民族の精神性を強く感じる作風」と語った。
今回の展示は李應魯美術館(忠清道)に続いて、釜山市立美術館(慶尚道)、光州市立美術館、全羅南道霊岩郡立河美術館(全羅道)で行われ、時代的・思想的・文化的な距離を越えて「共存の文化」を切り開く平和のメッセージを発信する。