在日と日本人の有志で作る「時調の会」がこのほど、詩集「時調(三行詩)」の第13集を発行した。同詩集から数編を紹介する。
「時調」は、高麗時代末期(14世紀頃)に成立し、次の朝鮮朝時代に流行した「三章」構成の伝統定型詩である。時調は「韓国伝統の詩」であり「韓国文学の遺産」として、現在も広く親しまれている。
韓国の時調関係者は、「時調は韓国人の魂、言葉、文を盛り込んだ韓民族のアイデンティティーともいえる存在だ。韓国文学の歴史は詩から始まり、時調の歴史は詩の歴史と共にあった」と強調する。
時調の会がスタートしたのは99年3月1日。時調の特徴である「三章」構成を「三行詩」に代えて、形式にとらわれず、自由な感情表現を行ってきたのが特徴だ。最初は在日2世を中心にした「在日の時調(三行詩)の会」として、在日文化の底上げと韓日交流を目的にしていたが、日本人メンバーが次第に加わるようになり、また韓国からの寄稿者も増えたので、名前を「時調の会」と改めた。
毎月発表会を開き、毎年詩集を発行している。創作は1行20字前後で3行を一首とする。表記方法は韓国語、日本語、中国語や英語でもかまわない。連絡先は、〒210-0846川崎市川崎区小田1-13-4金方「時調の会」事務局。FAX044・355・6907。
<東日本大地震> 高 裕香(コ・ユヒャン)
2011年3月11日、午後2時45分頃
地下の教室で作文指導をしていた
フラスコを縦に振ったような強い揺れが何度か
いつもと違う!
マニュアルは机の下に潜る?でも、校舎が潰れたら?
本を頭に乗せさせ6人を抱えるように運動場に避難
学校は新宿区の高台にある
地面の奥深くからひっくり返るような響き
周りの高層ビルがメトロノームのように大きく揺れている
子供たちは青白い顔で おびえと寒さに震えている
「オンマーオンマー」と大声で泣き叫ぶ
「大丈夫!大丈夫!」と皆の手を握り抱きかかえた
運動場に何時間いたのだろう?
ようやく落ち着き教室に移動 皆無事!
千年に一度の長い一日だった
<釜山賛歌/2011年春の日に> 韓 喜徳(ハン・キドク)
チァガルチ市場の人の渦 角にホヤ貝山積みに
忙しく手を動かしてリズムとり
ホヤ売るおばさん 唄響かせ人を呼ぶ
焼き栗屋のおじさん 辺りに焼く匂いを漂わせて
美味しい焼き栗はいかがとしゃがれた呼び声
栗のパックリ割れた実の皮をむき袋に入れる
海にむかったテラスでCDに自身の唄をいれ
青春の夢と野望に期待を託して唄を売る若者
その唄を聴きながら関釜フェリーを眺めている旅人
国際通りの食事を売るおばさんたち
遠い日の父や母の姿を思い出す
うどんにチジミキムチに腸詰め貝に魚
龍頭の高台より港の海を眺めれば
椿島は陸つづき 向こうに霞む五六島
大型船が係留され 荷を積んで動くトレーラー
<美しき済州道へ> 張 敬守(チャン・ギョンス)
竜頭岩
ゆったりと われら迎えし漢挙山
山神の怒りの跡や 竜頭岩
笑みこぼるトルハルバンの道祖神
*「トルハルバン」は済州島固有の石人像。
三姓穴
静かさや 三神生まれて夢の穴
ユーモラス 自然の匠 木石苑
*三つの穴から高、良、夫の三姓が生まれたとされる
萬丈窟(百五十年前にできた溶岩洞窟)
暗闇を 千態万象 幻想を
襟首に 何万年が 今ポタリ
城邑民俗村・日出峰
ゆうゆうと黒豚昼寝 人を待つ
牛島遥か 風ふきすさぶ 岬かな
霞立つ 白鹿の像や漢撃恋う
正房爆布
蒼き水 鶯の声海に落ち
石垣や 放牧牛馬 草を食み
和気満ちて菜の花街道 西帰浦かな
碧き水 海女の影三つ四つ
この地にて四・三事件 魂飛魄散