劇団ユニークポイント(山田裕幸代表)は、日韓共同制作の演劇「THE TUNNEL」を今月10日から都内で上演。劇団新宿梁山泊(金守珍主宰)は、在日100年をテーマに昨年韓国公演を行った「百年~風の仲間たち」の日本オリジナル版を東京・兵庫・愛知で上演する。
『THE TUNNEL』は、「日本と韓国が一本のトンネルで結ばれたら」という設定で展開される。
福岡から釜山まで直線距離で約130㌔。両国がトンネルで結ばれたら、車で2時間ほどで韓国に到着する。本場の韓国料理を食べて、海雲台のビーチで遊んで、その日のうちに日本に戻ることができる。
『THE TUNNEL』はそんなトンネルが建設されることになった未来の時代の話である。脚本・演出は山田裕幸さんで、共同脚本・演出を釜山演劇製作所ドンニョクの朴ヨンホンさんが務めている。韓日合わせて24人の出演者による一大群像劇だ。
同劇団は2年前にも日韓共同公演『通りゃんせ』を上演しており、今回が2作目となる。
山田さんは、「トンネルで日韓がつながることによって、とても面白くなる一方、失われるものも出てくるかもしれない、異文化と接するときの人々の不安を描きながら、新しい文化と出会う意味を描き出そうと考えた」と話す。
さらに、「昨年の東日本大震災を経て、演劇人に何ができるかという問いが突きつけられた。震災以後、私達が考えるニューワールドとは何かを演劇で示したいと考えた。演劇の底力を見せたい」と強調した。
在日3世の女優、洪明花さんは、「韓日はいま、仲良くもあり、ライバルでもある関係だ。その両国の愛憎関係がうまく描き出されている芝居だと思う。34シーンもあるので、場面転換を楽しんでほしい」と話す。
*10~14日=東京・座高円寺で上演。http://www.uniquepoint.org
新宿梁山泊は、ことしで創立25周年を迎える。『百年~風の仲間たち』は、ソウル斗山アートセンターからの依頼で、同劇団主宰の金守珍さんが作った。ソウルでは2011年5月~6月に上演され、話題を呼んだ。韓国のある演劇関係者は、「この数十年に韓日関係を描いた作品の中でも一番見ごたえのある作品」と評した。
その作品を日本オリジナル版に改め、今回日本各地で上演する。
大阪在住の歌手・趙博の歌「百年節」をモチーフにしたもので、在日100年の歴史を日常の生活の中に描いた叙事詩。
民族、国境、そういったものを肩で風切って越えて行く痛快音楽劇で、哀しくも楽しく、コミカルでシリアス、スペクタクルな新宿梁山泊独自の世界が展開される。
舞台は大阪・玉造の居酒屋「風まかせ人まかせ」。在日コリアンのたまり場のようになっている20周年を迎えたこの店は、しっかり者のおかみスジャ、その妹ヨンミ、料理人のアジェで切り盛りしている。そこに集う人々は皆、陽気で元気な面々だが、それぞれに大きな過去を背負う。
金守珍さん(写真・上から4番目)は、「在日100年の歴史の重み、在日の文化とは何かを、趙博さんと一緒に伝えたい」と話す。
趙博さん(写真・上から5番目)は、「在日の歴史をわかりやすく伝えようと考えて歌を作った。大阪の在日密集地・猪飼野を通して在日社会の未来と希望を描き出したい」と語る。
*8月18~26日=東京・吉祥寺シアター、9月7~9日=兵庫AIホール、9月14~16日=愛知・豊川市御津文化会館。℡03・3385・7971。