釜山ビエンナーレを始めとして、話題の美術展が韓国各地で開かれている。主要な展示を紹介する。
◆「学びの庭園」テーマ 釜山ビエンナーレ◆
現代美術の祭典「2012釜山ビエンナーレ」が開催中だ。釜山ビエンナーレは、本展示および公募で選ばれた新進キュレーター9人による特別展で構成される。今年のテーマは「学びの庭園」で、市民との疎通と協業を強調。今回は、芸術が生活とかけ離れているという考えを覆すことに焦点を当てている。そのために釜山市民50余人が参加する「学びの会」を構成し、美術家との疎通を行う「協業の過程」に重きを置いた。
市内各所にある新築工事現場を釜山の特徴とし、展示場を工事中の建物のように演出。これは、学びの会によるアイディアだ。現代美術の大衆化を前面に出し、既存の形式との差別化を図った。
また釜山市立美術館で開かれている本展示は美術家を41人に減らす代わりに、作品の世界を深く追究することを重視した。展示テーマとなった「学び」は過去に学んだ事をリセットし、先入観を捨てる事を意味する。本展示では、生態やアイデンティティなど現実に対する疑問を投げかけた作品がみられる。
中国の現代美術家である艾未未氏は、2008年の四川大地震の現場から持ってきた鉄筋および複製鉄筋の作品をみせた。公務員と建設会社が結託して建てたための「崩れそうなビル」に対する問題を想起させる。
芸術家と観客間の疎通という側面でみると、若いキュレーターによって企画された特別展が際立つ。広安里のミワールド、釜山文化会館などで65人の180余点を展示。釜山の歴史的記憶と文化的価値に光を当てながら、一般の人々に歩み寄った作品がみられる。
「認識のウリ(我々)」をテーマとした特別展は、我々が慣習的に受け入れてきた事柄が真実であるのかを問いかけている。ウリの意味が、他社との疎通を妨げる垣根となっていないかを考えさせる展示だ。24日まで。
◆湖林、文化財の茂みを歩く 湖林博物館◆
湖林博物館の設立30周年を記念し、特別展「湖林、文化財の茂みを歩く」がソウル・新林洞の分館で開かれている。
湖林は、農薬メーカーである成保化学の創業者尹章燮氏(成保文化財団理事長)の号だ。
尹氏が文化財の収集を始めたのは、考古美術史学者の故・崔淳雨氏(1916~84)、故・黄壽永氏(1919~2011)らと交流してからだ。
尹氏は集めた所蔵品をもとにし、82年にソウル・新林洞に湖林博物館を設立。09年には、新沙洞に分館をオープンした。
今回の特別展は、所蔵物の中でも最高の80余作品を展示。国宝222号の白磁青華梅竹文壺など国宝6つ、ソウル市有形文化財4つなどを含む。来年4月27日まで。
◆高麗磁器の名宝展 国立中央博物館◆
国立中央博物館が高麗青磁の特別展「天下第一 翡色青磁」を開催中だ。1989年に同博物館で開催した「高麗青磁名品展」以来23年ぶりの高麗青磁展で、国宝18点など最高峰の高麗青磁350余点を展示。日本の重要文化財に指定された高麗青磁2点も公開。
宋(中国)の国学者である太平老人が書いたとされる著書「袖中錦」で、天下第一の色として高麗秘色が挙げられている。今回は、これを展示テーマとした。秘色とは、高麗青磁の青み(翡色)を表現する言葉だ。
特別展は1~4部で構成される。
1部の「高麗青磁の始まりと展開」は、高麗で青磁が作られ始めた10世紀から最盛期の12世紀、そして衰退した14世紀までの作品を展示。
2部「青磁、高麗を見る窓」では、飲食、余暇の文化、宗教および葬礼意識における青磁の活用を知ることができる。青磁油瓶(ヘアオイルの瓶)など化粧品の容器として使用された青磁には、当時の貴族女性の華やかさが垣間見れる。
3部「創造性の発現、象嵌」は、高麗青磁だけの装飾技法である象嵌に光を当てた。
4部「天下第一を語る」では、天下第一に値する青磁22点を展示。特に「青磁象嵌雲鶴文梅瓶」(国宝68号)は、当時の人々の敍情性と華やかな文化が精巧な象眼技術で表現。12月16日まで。