芥川賞作家で、韓国や在日コリアンへの関心も強く持っていた故中上健次、在日2世で日本演劇界に大きな足跡を残した故つかこうへい(韓国名・金峰雄)。2人の作品を題材にした演劇が今夏、相次いで上演予定で、話題を集めている。
中上健次(1946~92年)は、和歌山県生まれの作家。被差別部落の出身であることを明らかにし、被差別部落を「路地」と表現した。
紀州熊野を舞台にした数多くの小説を発表し、ひとつの血族と「路地」の共同体をテーマにした土着的な作品世界は、「紀州サーガ」と呼ばれた。1976年に「岬」で芥川賞を受賞。未完となった「異族」は、被差別部落、在日コリアン、アイヌの人々が織り成す壮大な物語だった。韓国の伝統文化に強い関心を持ち、日韓文化交流にも携わった。
中上健次は92年、46歳の若さで腎臓がんのため他界した。生前唯一残した戯曲が『かなかぬち~ちちのみの父はいまさず~』である。その戯曲を、やはり日韓交流に関心を持つ外波山文明主宰の劇団椿組が、東京・新宿の花園神社で野外劇として再演する。
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