特別展「柳宗理の見てきたもの」が、東京・駒場の日本民藝館で27日から開催される。柳宗理は民芸運動の創始者である父・柳宗悦の志を受け継ぎ、約30年間にわたり日本民藝館の3代目館長として活動した。同展では柳宗理が蒐集した当館コレクションなどを展示し、その足跡をたどる。杉山享司・同館学芸部長に文章を寄せてもらった。
◆柳宗悦・宗理父子の足跡をたどる 杉山 享司(日本民藝館学芸部長)◆
同展の趣旨は、世界的な工業デザイナーとして、また日本民藝館の三代目館長として29年間にわたり活躍した柳宗理(1915~2011年)が、どのようなものに眼差しを向けて生活し、デザイン活動を行ってきたのかを、氏が蒐集した品々によって紹介するものです。つまり、クリエイターとしての「柳宗理の原風景」を、蒐集という「眼」の仕事を通して明らかにしようとするものといえましょう。
展示される作品は、柳宗理が館長時代に蒐集した当館コレクションと、この度柳家から遺贈された宗理愛蔵の品々。具体的には、日本の伝統美を現す「陶磁器」「面」「染織品」「花紋折り」「菓子型」「雛凧」、沖縄古来の風土と信仰から生まれた「シーサー(屋根獅子)」「陶器」、朝鮮民族が生み出した固有の美が光る「民画」「陶磁器」「木工品」などで、自らの眼と足で蒐集した古今東西の逸品約150点です。
宗理は、「消費を煽るようなデザインは、本当のデザインではない」との信念の下、「暮らしへの奉仕」を矜持として、長年にわたりデザイン活動を展開していきましたが、その活動の原点には「民藝は美の根源であり、そこから物造りのあるべき心構えを学ぶべきだ」との確信があったのです。
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