「茶と美―柳宗悦の茶」が、東京・駒場の日本民藝館で10日から開催される。同館創設者で朝鮮工芸の美を愛した柳宗悦が集めた茶器の代表作が展示される。月森俊文・同館学芸員に文章を寄せてもらった。
◆柳が志向した「茶」の貴重な記録 月森 俊文(日本民藝館学芸担当)◆
日本を代表する思想家・柳宗悦(1889~1961年)は現在の東京都港区に生まれます。学習院高等科では鈴木大拙や西田幾多郎らの教えを受け、1910年の卒業時に文芸雑誌『白樺』創刊に参加しました。
『白樺』では同人として美術面を受けもつと共に、宗教哲学の論考などを寄稿します。東京帝国大学在学中にはウィリアム・ブレイクに傾倒、日本で最初の研究書を上梓しました。
その後、朝鮮工芸の美に強い感銘を受け、その造形を生んだ朝鮮の人々に敬愛の心を寄せます。そして朝鮮工芸の美に関する著作と日本の朝鮮政策を批判する文章を発表し、1924年には朝鮮民族美術館を開設しました。1925年には無名の職人が作る民衆的工芸、いわゆる「民藝」の美を見出し、陶芸家・河井寛次郎、濱田庄司らと民藝運動を展開。1936年に日本民藝館を創設すると初代館長に就任します。1948年には「大無量寿経」第四願から啓示を受け、主著作『美の法門』を執筆。初期キリスト教から仏教に関心が移り、晩年は浄土思想についての著作も発表していきます。
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