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2014/06/20

<韓国文化>韓流シネマの散歩道 第4回 変貌するオモニ(母親)像                                       二松学舎大学 田村 紀之 客員教授

  • 韓流シネマの散歩道 第4回 変貌するオモニ(母親)像①

    キム・ギドク監督 『嘆きのピエタ』

  • 韓流シネマの散歩道 第4回 変貌するオモニ(母親)像②

    ホ・ジュノ監督 『母なる証明』

  • 二松学舎大学 田村 紀之 客員教授

    たむら・としゆき 1941年京都生まれ。一橋大学卒。東京都立大学経済学部教授、二松学舎大学教授などを経て現在は二松学舎大学客員教授。

◆母性とセクシャリティー◆

 外国映画に「母もの」というジャンルがあるのかどうかは知らない。しかし、少なくとも日本では、タイトルに母の一文字が入り、三益愛子や望月優子主演と来れば、それだけで涙腺が緩んだ観客が多かったはず。水口紀勢子が『映画の母性』(彩流社)で、母親像の日米比較をやっている。

 韓国で似たような例を探すとすれば、『憎くてももう一度』をおいてほかにない。シリーズ化され、リメークされている点でも、日本の母ものに匹敵する。甘く切ない主題歌は、オールドファンにはこの上なく懐かしい。実の父親に引き取られた息子と母が、遠く離れて同じ月を見上げながら、逢いたい、逢いたいと涙に暮れる。最新のバージョンは2001年版(チョン・ソヨン監督)。09年にはTVドラマ化されている。

 ただしこの種の母ものは現在、日本でも韓国でも、あまり評判はよくない。すれ違う相手が娘でなく息子であることからも想像できるようにこれは、男女の愛憎を移しかえたメロドラマの変種とみるべきものである。メロドラマについては、のちに改めて取り上げる。


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