◆各国に存在した「恐怖のシステム」◆
ポルポト政権による大虐殺を主題とした『消えた画 クメール・ルージュの真実」(2013年、リティ・パニュ監督)を、私は東京・渋谷のユーロスペースで観た。この日のトーク・ショーでは、監督と同じ体験をして奇跡的に生還した『虹色の空』(春秋社)の著者、久郷ポナレット氏の話があった。憎しみの連鎖を断つためにも、ポルポトを憎む気持ちは自分の胸にしまっておきたい、という意味の締めくくりが印象深かった。
なお、リティ・パニュ監督自身とC・バタイユの共著、『消去』(現代企画室)もまた、夥しい数の同朋を排除し消去してしまう体制の恐ろしさを描く体験記である。ポト派裁判は現在も進行中。
同胞の排除と消去は、ルワンダの大虐殺(94年)でも経験している。フツ族過激派による、穏健派およびツチ族への無秩序で残忍な攻撃は、『ホテル・ルワンダ』(04年)、および『ルワンダの涙』(05年)が丹念に描写している。
つづきは本紙へ