◆増える翻案・リメーク作品◆
主題のシンクロ化(同時化)に議論を戻すと、ドラマの筋立ての供給源、つまり、劇映画のストーリーのもととなる原作のありかが問題となる。西洋諸国での老舗は、ギリシャ・ローマ神話、新・旧約聖書、シェイクスピア作品などと多彩だが、東洋の古典もこれらにひけをとらない。
近代の文学作品の映画化については、洋の東西を問わないばかりか、各国入り乱れての翻案・リメーク競争が行われている。一例として、大人の恋のゲームとその結末を綴った18世紀末の書簡小説、ラクロ『危険な関係』(竹村猛訳、角川文庫)をとりあげてみよう。本家のフランスでは、ロジェ・バディムにより1959年に映画化され、ジュラール・フィリップとジャンヌ・モローという二大人気俳優の主演に加えて、アート・ブレイキーによるジャズの斬新さが評判をよんだ。
その後、バディム自身が1976年にリメーク(邦題は『華麗な関係』)したあと、二度のアメリカ映画(1988年および1999年)、および英仏合作映画(『恋の掟』、1989年)となって登場し、日本でも78年に、日活ロマンポルノとして翻案されている(藤田敏八監督、新藤兼人脚本)。
これだけでは不十分なのか、このラブ・ゲームは李朝時代の朝鮮に舞台を移す。ヨン様の映画初出演作品としても話題をよんだ『スキャンダル』(2003年、イ・ジェヨン監督)、がそれ。退廃した李朝両班社会でのスキャンダラスな恋の遊戯を、イ・ミスク、チョン・ドヨン、イ・ソヨンらが、ペ・ヨンジュンと渡り合う。
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