◆物足りない「偏見の打破」◆
繰り返しになるが、「タブーへの挑戦」という話題を、さらに掘り下げてみよう。いうまでもなく、タブーという概念自体が、国により時代によりさまざまな内容をもつ。したがってタブーとそれへの挑戦の内実も、きわめて相対的なものであることを断っておきたい。
最近の韓国映画のなかには、ひと昔まえには想像もできなかった題材を大胆にとりあげ、しかも相当にどぎつく描写したものが少なくない。時代が変わったという印象を強くする昨今である。
以下、思いつくままに目ぼしい作品を列挙するとともに、私なりのコメントを付してゆきたい。
まず、『秘蜜』(04年、原題は「緑の椅子」)は、19歳の少年と離婚経験をもつ39歳の女との性交渉を扱う。
逮捕された女は奉仕活動に従事するが、女の友人宅でふたりは再会。女のもとの夫や少年の両親らをも呼んでのパーティーで、自分たちの年齢を超えた恋の正当性を主張する。いまではそれほど珍しくもないテーマだが、演説調のセリフを長々と続けるのはいささか興ざめ。
つぎに、『ウンギョ 青い蜜』(12年)は、老詩人とその愛弟子の作家、そしてアルバイトにきた女子高校生ウンギョとの、これまた年齢差を超えた愛憎関係が主題である。
つづきは本紙へ