◆多様なバージョンの『オールド・ボーイ』◆
さきごろ、『ルーズ戦記 オールドボーイ』(土屋ガロン&嶺岸信明、全8巻、双葉社)を読んだ。
マンガを真剣に通し読みするのは、『あしたのジョー』以来のことだ。それも、「読む」という表現が正しいとしての話。この原作と、パク・チャヌク監督の『オールド・ボーイ』、そしてアメリカでのリメーク版を比較したかったからである。三者の詳しい比較は、雑誌『Cut(カット)』第343号の特集、「マンガが映画と愛しあうとき」を参照されたい。
不思議なことに、原作では、近親相姦はじつに遠慮がちに示唆されているだけであり、主人公が訳も分からずに監禁される期間は10年である。ところがパク・チャヌク監督の韓国版では15年、そしてアメリカ版では20年となっている。さらに主人公が監禁される原因となった「秘密」も、この期間の長さに比例するかのように、それぞれのバージョンで深刻化してゆく。
原作では、監禁理由を示すキーワードは、最終巻(第8巻)の「ギリシャ悲劇に匹敵するような」凄まじい出来事という言葉と、主人公と肉体関係をもった若い女がエピローグで彼を、「お父さん」と呼ぶシーンの二カ所にすぎず、しかも監禁理由は謎のままに残されている。
ところが、韓国版と米国版では、その理由が監禁者側の近親相姦を言いふらされたことにあったと明示し、しかもその中身が、上記のように監禁期間の長さに応じて凄みを増してゆく。
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