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2015/10/23

<韓国文化>韓流シネマの散歩道 第17回 民主主義を求めて戦った人々                                     二松学舎大学 田村 紀之 客員教授

  • 韓流シネマの散歩道 第17回 民主主義を求めて戦った人々

    80年光州事件を背景にした『ペパーミント・キャンディー』

  • 二松学舎大学 田村 紀之 客員教授

    たむら・としゆき 1941年京都生まれ。一橋大学卒。東京都立大学経済学部教授、二松学舎大学教授などを経て現在は二松学舎大学客員教授。

◆民主化とペパーミントの味◆

 建国以来の韓国政治は、権力者の正統性を否認する野党と、これを力で排除しようとする与党との激突の歴史だった。海外のメディアはしばしば、同じレールの上を反対方向からばく進する二本の列車にたとえた。

 不正選挙や強引な政治手法に抗議する大衆エネルギーの爆発を前に、初代大統領・李承晩は政権を投げ出す。これが1960年4月19日の「学生革命」である。

 この過程を江原道の小学校に転校してきた少年、ハン・ビョンテの目を通して、いわば斜めから描いたのが、『われらの歪んだ英雄』(92年、パク・ジョンウォン監督)だ。

 級長のオム・ソクテは体格も図抜けていて、クラスの全員を支配下においている。ビョンテは当初、この独裁者に刃向おうとするが、級友の援護もなく、無気力な教師たちは見てみぬふりをする。結局、ビョンテも独裁者に屈服し、その手下となる。

 しかし新しい担任教師の着任とともに、教室内でも「革命」が始まる。映画は、権力に迎合し盲従する大人たちの姿をそのまま子供の世界に投影し、二つの革命を同時進行的に描いてゆく。

 学生革命後の極度の社会的混乱は若手将校の蜂起を招来し(61年5月16日)、韓国は軍人政権時代に突入する。経済的には開発体制の幕開けであるが、政治的には、反共を「国是」とした権威主義体制の確立でもある。大統領・朴正熙の評価は、いまだにこの両面の間を揺れ動いている。

 この体制は、民主化を求める勢力のあいだに、新たな英雄を生みだした。70年に平和市場で焼身自殺した全泰壱がその人である。彼の死はその後も語りつがれ、『美しい青年 全泰壱』(パク・クァンス監督、95年)として映画化もされている。ところが79年10月26日、朴正熙は歌手・沈守峰らを脇においた酒席で暗殺される。イム・サンス監督『ユゴ 大統領有故』(2004年)はこれを映画化したもの。

 また、軍人出身の大統領たちを茶化した秀逸な辛口コメディ『大統領の理髪師』(04年)は、イム・チャンソン監督のデビュー作。主演の宋康昊の名とともに記憶しておきたい。


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