長い歴史の中で豊かな伝統文化を育んできた韓国。朝鮮王朝時代の建物や王陵、遺跡などの多くの場所がユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産に登録されている。昨年は「南漢山城」が登録され、韓国の世界遺産は文化遺産が10件、自然遺産が1件となった。また、11軒の記録遺産や17件の無形遺産などを有す。韓国人の精神と歴史、文化が息づく伝統と美しい自然は、普遍的価値として世界の人々を魅了している。
◆新羅の都にある「石窟庵と仏国寺」◆
新羅時代の貴重な遺跡や文化財が数多く残る古都、慶州。郊外は吐含山の中腹にそびえる仏国寺=写真=もその1つで、仏の世界である仏国土を再現した秀麗なる仏教建築として世界的に知られている。幾たびも増築・修復を繰り返し、多くの参詣者を集め、最盛期の10世紀頃には現在の10倍もの規模を誇ったと伝えられている。仏国寺からさらに7㌔ほど奧に入ったところにあるのが、仏国寺とともに新羅美術の最高峰とされる石窟庵。額に埋め込まれたガラスが洞窟内に差し込んだ朝日に輝く様はあまりにも気高く、厳かな美しさに満ちている。
◆艶やかな王朝建築「昌徳宮」◆
朝鮮王朝500年の都、ソウルにある五大王宮の一つ、昌徳宮=写真。第3代王太宗によって1405年に建てられた離宮だが、正宮である景福宮が焼失したため、270年の長きにわたってここで政務が行われた。王朝時代の栄華を色濃く残しながらも、王宮にありがちな華美なところがなく、周囲の自然と調和した建物や庭園の配置が絶妙だ。五大王宮の中では比較的保存状態がよく、色彩も鮮やかな木造建築の数々は、当時そのままの風雅な雰囲気を漂わせている。
◆特異な自然が育んだ「済州火山島と溶岩洞窟群」◆
韓国本土の南西約130㌔の海上に浮かぶ済州島。火山がもたらした荒々しくも美しい景観と学術的な価値により2007年、城山日出峰=写真、漢拏山、万丈窟などからなる「済州火山島と溶岩洞窟群」が韓国初の世界自然遺産に登録された。火山島の厳しい自然環境がつくり上げたダイナミックな景観と、韓国最南端の温暖な気候が育んだ豊かな動植物の生態系で本土とは異なる自然と文化を楽しめる国際的なリゾート地に変貌を遂げている。
◆22代王が築いた城郭「水原華城」◆
ソウルから南へ約35㌔の水原市にある、李氏朝鮮第22代王の正祖が築いた城郭「華城」=写真。正祖の父は、王の世継ぎでありながら政争に巻き込まれ、非業の最期を遂げる。正祖はその死を悼み、霊を弔うのに風水的に最高の土地であった水原に改葬。父のそばにいられるよう、ソウルから都を移そうと考え築造を開始したのがこの華城だった。1796年に工期2年で完成。しかし、その直後に正祖は亡くなり、水原遷都は幻と消えた。
◆新羅1000年の古都「慶州歴史地域」◆
紀元前57年から紀元935年まで1000年にわたって新羅の都だった慶州。新羅が676年に百済、高句麗を滅ぼし三国統一をなし遂げると、その都である慶州は韓半島の政治・文化の中心地として繁栄を極めた。世界遺産に登録された歴史地区には遺跡が点在、古墳群が独特の景観をつくり出している。また、7世紀頃に建造され星の動きや月の満ち欠けの観察に使われたという東洋最古の天文台「瞻星台」=写真=などの建造物が随所に残っている。