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2016/05/20

<韓国文化>韓流シネマの散歩道 第22回 韓流ファンタジーに再注目                                     二松学舎大学 田村 紀之 客員教授

  • 韓流シネマの散歩道 第22回 韓流ファンタジーに最注目

    主演のシム・ウンギョンが好演した『怪しい彼女』

  • 二松学舎大学 田村 紀之 客員教授

    たむら・としゆき 1941年京都生まれ。一橋大学卒。東京都立大学経済学部教授、二松学舎大学教授などを経て、現在は同大学客員教授、都立大学名誉教授。

◆「変身願望」かなえ、奇跡を生む◆

 いわゆる韓流ファンタジーが話題になっている。その直接のきっかけは、すでに紹介済みの『怪しい彼女』(2014年)が、倍賞美津子・多部未華子主演で、『あやしい彼女』としてリメークされたことだ。これと前後して日本公開された『ビューティ・インサイド』ともども、大人のファンタジーとしての「変身」ものに関心が集まった。

 ひとくちに変身ものといっても、じつはいくつかのタイプがある。もっともお馴染みなのが、スーパーマンはじめウルトラマンや仮面ライダーなど、大人も子供も楽しめる英雄への変身だ。

 日頃から親しくしているごく普通の隣人が、突然英雄になり変わる。英雄への「変身願望」をかなえ、奇跡を生むためには、特定の仕草や呪文などの「儀式」を経なければならない。忍者ごっこなど子供たちの遊びでは、この儀式が重要な意味をもつ。

 ときには、これらの儀式に代わる何らかの仕掛けが必要となる。タイム・スリップものや異次元空間への移行ドラマでは、大掛かりな理化学装置が準備されることもある。鏡など大小の道具類、手紙や日記類が利用されることも少なくない。

 上記『怪しい彼女』では、若返りのための写真館がその装置となる。写真館の入り口には、オードリー・ヘップバーンとグレゴリー・ペックという例のコンビの写真が飾られている。

 写真による若返りというファンタジーに加えて、この映画をさらに魅力的にしているのが、音楽に挑戦する若者たちの姿である。孫を励まし、プロとしてデビューさせようと奮闘する若い祖母は輝いていて、韓国版と日本版それぞれに十分楽しませてくれる。

 話はそれるが音楽といえば、『幸せをつかむ歌』(16年)で売れないロック歌手役をこなすメリル・ストリープの役者魂には敬服するほかない。彼女が若返るわけではないが、実の娘との共演というのも話題となった。

 変身ファンタジーのいまひとつのタイプが、F・カフカに代表される重苦しいテーマを扱ったものである。

 ここでは、望みもしないのに突然身体が別物になっていたり、あるいは望んだものとは似ても似つかない代物へと変えられたりする。後者の典型例として評判になったのが、『渇き』(09年)である。監督は朴贊郁で主演は宋康昊、原題のパクチュイは蝙蝠(こうもり)の意味。


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