韓日国交正常化50周年を記念して昨年末、鄭明勳(チョン・ミョンフン)指揮によるソウル・フィルハーモニー管弦楽団と東京フィルハーモニー交響楽団合同の「日韓友情『歓喜の第九』合同演奏会」がソウルと東京で行われ、両国友好の思いを一つにした。松田亜有子・東京フィル広報渉外部部長に報告を寄せてもらった。
◆両国の友好促進を願って 松田 亜有子さん(東京フィル広報渉外部部長)◆
2015年12月26日、2000人の聴衆で埋め尽くされた東京のBunkamuraオーチャードホールは、音楽の力で会場全体が一体となり歓喜に満ち溢れていた。アジアの宝である指揮者・鄭明勳のもと、ソウル・フィルハーモニー管弦楽団と東京フィルハーモニー交響楽団が共に奏でたベートーベン交響曲第九番の演奏が終わった瞬間、ブラボーの声と熱い感動に包まれた拍手が舞台の上の奏者たちに寄せられた。
大喝采のカーテンコールの後、二つのオーケストラの奏者たちは自然とお互いを称え、笑顔で握手、熱い抱擁を交わしていた。客席でも柳興洙(ユ・フンス)・駐日韓国大使と福田康夫元首相らが笑顔で握手。まさに、音楽の力で国を超えて、個と個が繋がってゆく奇跡的な時間が生み出されていた。
このアジアの二つの国のオーケストラのレベルを引き上げ、そして史上初の日韓のオーケストラ合同演奏会を企画、リードしてきたのが指揮者・鄭明勳である。1年以上の準備をかけて12月を迎えた。その時がまさに日韓国交正常化50周年と重なり歴史的なフィナーレを飾る事となった。
事務局側としては、日韓の政治状況が著しく悪かった時期にこの事業を推進することは難しく、何度も諦めかけたが、昨年8月下旬に公演実現のための条件が固まり一気に本公演に向けて動き始めた。数々の困難を乗り越え、12月に東京フィルの奏者たちがソウルフィルの練習場へ行き、最初の音が鳴った瞬間、ようやく一つになったと胸が熱くなったことを今でも覚えている。
「皆さん、内面の音に100%集中しなければなりません。二つの団体が一つの舞台に上がるのは今回が初めてで、韓日修好50周年に意義深い舞台をつくる為に1年以上かけて準備をしてきました。ベートーベンの『交響曲第九番』の歌詞に、『すべての人間は兄弟になる』とあります。私の韓国の家族(ソウル・フィル)と日本の家族(東京フィル)が一緒に演奏することに、特別に嬉しい気持ちで挑みたいと思います」と、マエストロ鄭は優しく奏者たちに語りかけ本番に向けて準備を進めた。
つづきは本紙へ