東京フィルハーモニー交響楽団の首席ファゴット奏者就任から10年が過ぎた崔栄津氏。最近、釜山フィルハーモニー交響楽団と協演するなど韓日で精力的な演奏活動を続けている。デビューアルバムとなるファゴットのCDも発表した。また、ファゴットのマシュウ・ルッジェーロ国際木管コンクールの審査員にも選ばれた。崔氏にファゴットの魅力などを聞いた。
なぜファゴット奏者になろうと思ったのか。
「ピアノ教師だった母が低音楽器が好きだったことがきっかけでした。中学生から趣味で始めたファゴットが、いつしか自分自身を自由に表現できるかけがえのない存在へと変わり、気づけばファゴット奏者として生きて行くことしか頭にはありませんでした」
ファゴットの魅力は。
「人間の肉声に近く、人情味を感じる温かみのある音色と、楽器の大きさからは想像できない、繊細なコントロールが要される楽器の奥の深さに惚れ込んでいます。オーケストラの中で、控えめで目立たない役割が多いながらも、その影響力は大きく、時には主役級のこともやってのける魅力溢れる楽器です」
ファゴット演奏でもっとも心掛けている点は。
「自分自身と楽器のコンディションを常に整えることです。特にリードは気温や湿度で大きく変わりますので、どのような気温、湿度であっても対応できるように準備を整えています」
「ライブ・イン・ハノーファー」と題してCDを発表した。サン=サーンスのファゴット協奏曲や難局として名高い尹伊桑のファゴットのためのモノローグなどが収録されている。
「ドイツ・ハノーバーで行ったリサイタル本番を録音したもので、ソロ曲以外にも、ピアノの文正載、フルートの崔禎允とのトリオ演奏も収録されています。このCDを聞いていただく時に、まず1曲目の冒頭に注目していただきたい。どんな気分の時にでも、この曲が流れ、ファゴットの音が聞こえて来た瞬間から心に安らぎと、前を向いて進みたくなります」
釜山フィルと協演も。
「故郷釜山での代表的なオーケストラとの演奏経験は、プロの演奏家を夢見て、ただひたすら大好きなファゴットを吹いていた中学生の頃が懐かしく思い出されます。自分が新たにチャレンジして進む後押しをしてくれるような気がします。
ファゴットの協奏曲といえばこれ、モーツァルトとウェーバーの協奏曲が定番でよく知られていますが、釜山では少し珍しいロッシーニのファゴット協奏曲をやりました。ファゴットの魅力がたっぷりと堪能できる楽曲です」
M・ルッジェーロ国際木管コンクールの審査員にも選ばれた。
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