植民地時代をテーマにした映画、演劇が相次いで発表され話題を呼んでいる。今月中旬に公開される韓国映画『暗殺』は、1930年代の民族解放運動が描かれる。また先日、都内で上演された韓日合作演劇『代代孫孫2016』は、韓国が日本を植民地支配していたら、という設定で歴史を見つめた作品だ。映画『暗殺』についてコリアアーツセンターの李喆雨(イ・チョルウ)代表に、『代代孫孫2016』について女優・劇作家の山谷典子さんにそれぞれ文章を寄せてもらった。
◆植民地支配の光と影 李喆雨・コリアアーツセンター代表◆
解放70周年にあたる昨年、制作費180億㌆をかけてつくり、韓国では1300万人の観客を動員し話題となった映画『暗殺』(チェ・ドンフン監督)を観た(日本では16日よりシネマート新宿他全国順次公開)。
同映画は、1930年代、朝鮮が植民地であった上海・京城を舞台に朝鮮軍司令官川口守と親日人士カン・イルグクを結婚式場で暗殺すべく、チョン・ジヒョン(独立軍女狙撃手アン・オギョン役)、チェ・ジフン(武官出身の速射砲役)、チェ・トクムン(爆弾専門家のファン・トクサム役)という個性的な3人のキャラクターが特別チームを作り暗殺を実行する過程を描いている。
1930年代の上海と京城を完璧な時代考証に基づく背景、大中小道具、衣装、街並みなど当時を彷彿とさせていたが、おそらくこういうところにお金がかかったのではないかと思われるほど見事に再現していた。
暗殺班3人組のなかでもチョン・ジヒョンが狙撃手役と親日人士カン・イルグクの娘〝満子〟役という一人二役を見事に演じていた。双子の設定が数奇な運命の中、善と悪、光と影というような単純な二分的なものではなく、同一人物による二重性とも取れる心理的な描写も含めて、この女優が魅力的で難しい役柄をよくこなしていた。
主人公(チョン・ジヒョン)が日本軍が敗北した〝青山里戦闘〟の報復として住民を皆殺しにした犠牲者の生き残った少女として後に独立軍女狙撃手になり上官を撃ったとして捕らえられるが(おそらく隊のために撃ったと思われる)、特別任務のために出発するとき、〝ヌナ、チャルガ(お姉さん、お元気で )〟という隊員たちのあいさつがあったが、彼女が隊員たちにいかに慕われていたかを物語っていて、当時の独立軍の若い無名戦士たちの群像たちが印象に残る。
チェ監督は、「シナリオが難しく止めようかと思ったことがある」と発言しているが、その監督の発言を裏付けるような苦悩のあとを私なりに選んで紹介すると、解放後、イ・ジョンジェ(臨時政府警務局隊長ヨム・ソッチン役)が〝なぜ同志を売ったのか〟という問いに〝独立するとは思わなかった〟という答え。1949年、反民族特別委で示したイ・ジョンジェ(親日警察官)による反論場面のセリフ(長いので略)。
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