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2016/10/14

<韓国文化>国や社会に翻弄された人々を描く

  • 国や社会に翻弄された人々を描く

    戦争の悲惨さを描いた『哀れ、兵士』

 舞台芸術の韓日交流が盛んだ。「フェスティバル/トーキョー(F/T)」は東京で開催される国際的な舞台芸術フェスティバル。第9回目の今回は、「境界を越えて、新しい人へ」をテーマに開催。韓国からは朴根亨作・演出の『哀れ、兵士』が上演される。また、韓日演劇交流を行う東京デスロックは『亡国の三人姉妹』、劇団青年座は『人類最初のキス』を上演予定だ。

 劇団コルモッキルを率いる朴根亨は、劇団名でもある「路地」に生きる庶民の視点から、現代社会の諸問題に大胆に斬り込んできた。

 『蛙』(13年)での元大統領をめぐる風刺表現をきっかけに助成金申請の辞退を強いられるなど、国家と芸術表現の間で格闘する朴が、南山芸術センターの協力を得て、この3月に発表した話題作がF/Tに登場する。2015年の脱走兵、1945年の朝鮮人特攻隊員、2004年のイラクで米軍に食品を納入していた業者、2010年に北朝鮮をのぞむ白翎島付近で沈没した哨戒艇の乗組員たち。

 本作では、時間と場所の異なる4つの「生きたかった人々」のエピソードが、併行して描かれる。国や社会に翻弄された彼らの生きた軌跡、時には笑いさえ交えた記憶の集積は、やがて重いパンチのような「歴史」となって、いまを生きる私たちに迫りくる。被害者/加害者とは誰を指すのか。戦争はどのように始まるのか。真の戦線は、どこにあるのか…を描く。


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