ビデオ・アートの父、ナムジュン・パイク(白南準)の没後10年を記念して「ナムジュン・パイク回顧展」が、東京のワタリウム美術館で開催中。また京都の高麗美術館では特別展「韓国の伝統組み紐メドゥプ」を開催中だ。
ナムジュン・パイク(1932年~2006年)は、「ビデオアートの父」「ビデオ・アートの先駆者」と評される、20世紀最大の芸術家の一人。ワタリウム美術館コレクションから、パイクが最も活躍した70年代から90年代にかけてのインスタレーション、ビデオ、ペインティング、ドローイングなど230点を通じて、パイクの全貌を明らかにする。
パイク自身の手による未発表原稿や、参禅先の永平寺にて制作したビデオアート作品、故筑紫哲也氏による当時のTVインタビュー映像などを加え、ナムジュン・パイクの人間像や思想的背景が浮かび上がってくる構成としている。
また1961年に出会って以降、生涯を通じて『ユーラシア』と呼ばれる共同制作を行ったドイツ人アーティスト、ヨーゼフ・ボイスに関する作品群は、特別に一部屋の展示室を設けている。
タイトルは、パイクが1993年にワタリウム美術館カタログに寄稿した、2020年に笑っているのは誰かという大胆な予測にちなんでいる。
パイクは、ソウルの裕福な家庭に生まれ、韓国戦争が勃発すると日本に逃れ、鎌倉へと移住した。卒論『アーノルト・シェーンベルク研究』で東京大学文学部美学美術史学科を1956年に卒業後、現代音楽を学ぶべくドイツに渡る。1962年にはジョージ・マチューナスからの誘いで国際的な芸術運動フルクサスに参加した。
1963年にヴッパータールで世界初のビデオアート作品を発表、テレビを使ったアートの可能性を探るべく、当時モノクロ1チャンネルの放送しかなかった西ドイツを離れ、カラーテレビ放送の始まっていた日本に再来日、当時TBSに勤めていたエンジニアの阿部修也と共にビデオシンセサイザーの開発・研究を行う。
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