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2017/08/18

<韓国文化>韓流シネマの散歩道 第30回 重い問いかけの意味するものとは                                     二松学舎大学 田村 紀之 客員教授

  • 韓流シネマの散歩道 第30回 重い問いかけの意味するものとは

    「赦し」をテーマにした映画『私たちの幸せな時間』

  • 二松学舎大学 田村 紀之 客員教授

    たむら・としゆき 1941年京都生まれ。一橋大学卒。東京都立大学経済学部教授、二松学舎大学教授などを経て、現在は同大学客員教授、都立大学名誉教授。

◆死刑と赦しをめぐる人間模様◆

 『私たちの幸せな時間』(2006年、宋海星/ソン・ヘソン監督)という映画では、強姦殺人で死刑執行を待つ青年(姜棟元/カン・ドンウォン)が、従兄に強姦されて自殺未遂をくりかえしてきた大学講師の女性(李奈映)に心を開き、愛し合うようになる。

 ここでは「赦し」が大きなテーマになっており、青年に娘を殺された母親が死刑執行の前に青年を赦すと告げにくる。また大学講師も、自分を責めた母親を赦そうと決意する。結局、複合した赦しあいを経て、青年の死刑が執行される。

 この映画については、裵姈美(ペ・ヨンミ)氏の「韓国・死刑制をとりまく諸問題」(京都にんじんの会編『銀幕のなかの死刑』、インパクト出版会所収)という講演録がある。彼女によれば韓国では1997年末の大量執行以来、事実上の執行停止が続いていた。

 そして99年以降、毎年のように死刑廃止法案が国会に提出されているが、自動廃棄、あるいは係留中の扱いとされてきた。また、死刑は憲法違反ではないという、憲法裁判所の判決が出されている。

 金基徳(キム・ギドク)監督の『ブレス』(息、07年)の女主人公は、夫の浮気でもやもやしているとき、たまたまTVで、みずから死期を早めようとする死刑囚の話を知る。彼女なりに思案したあげく、死刑囚に四季をプレゼントすることを思いつく。

 プレゼントの内容は、この監督ならではのアイデア。妻と死刑囚のあいだに愛が芽生えると、夫(河正宇)はこれを妨害しようとする。河正宇という俳優の非凡さについては、別途考える機会を持ちたい。

 『インディアン・サマー』(ノ・ヒョジョン監督、01年)では、夫殺しで死刑判決をうけた女のために奔走する国選弁護士が、控訴審で無罪を勝ち取る。

 二人はひとときの小春日和(原題の意)を楽しむが、大法院(最高裁)は無罪判決を破棄。二人の闘いは続く。

 『七番房の奇跡』(12年、イ・ファンギョン監督)は、死刑囚として収容された知的障害者の父親(柳承龍)と、彼の幼いひとり娘の笑いと涙の物語。幼少時代の娘イエスンを演じるカル・ソウォンが演技達者で可愛い。父親の同房にいるのは、強姦犯に暴力団員、詐欺師やスリなど、曲者たちばかりだが、彼らがいろいろと知恵を絞ってこの父と娘を助ける。

 その奇抜なアイデアと実行力が観客を笑わせ、胸を締めつける。結局、娘イエスンのために父親が犯行を認めてしまったため、再審は棄却され刑が執行される。この意味で、七番房に「奇跡」は起きない。原題は「贈り物」。

 しかし七番房の同室者たちにとって、


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