◆迷宮事件を映画化してヒット◆
韓国ではほぼ同じ時期に女性連続暴行殺人事件、多数の少年の殺人事件、そして男児の誘拐殺人事件が起こり、そのいずれもが迷宮入りとなっている。そしてこれらの出来事がそれぞれ映画化され、ヒット作となった。
まず、1986年から91年にかけて、華城の台安村で女性が連続して暴行殺人の被害者となった。これは「華城事件」として知られている。ハ・スンギョン著「華城事件は終わっていない」(辰巳出版、2004年)は、事件を直接担当した刑事の手記である。
この実話は2003年に、奉俊昊の手により、『殺人の追憶』の題で映画化された。『吠える犬は噛まない』(2000年)や『母なる証明』(2009年)などの既述作品でもわかるように、この監督の手腕は確かである。宋康昊および金相慶という芸達者と脚本のうまさが、サスペンスを盛り上げる。
地元の刑事である宋康昊に、「ソウルの田舎者」と対抗心を剝き出しにされながらも、彼と心を通わせる金相慶。彼らの努力もむなしく、実は唯一の目撃者だったと思われる少年を死なせてしまう。後日、宋康昊が事件現場を訪れるラストが秀逸である。
つぎに『カエル少年失踪殺人事件』(10年、李揆萬監督)は、「カエルを取りに行く」と言い残したまま1991年に行方不明となった5人の小学生をめぐって、特ダネを追うTV局記者(朴埇佑)、事件に関心を寄せる大学教授(柳承龍)、必死で子供たちを捜しまわる刑事(成東日)の、三者三様の関わり方を描く。
容疑者はつぎつぎと浮かぶものの決め手がない。観客は、もどかしくて苛立たしい気分にさせられることこのうえない。結果的には、大邱の城西小学校の少年たちは、白骨死体で発見される。
薛景求主演の朴珍杓作品『あいつの声』(07年)は、これも91年にソウルで起こった「イ・ヒョンホ誘拐殺人事件」を素材としたもの。江南区の鴎区亭洞は、富裕層のマンション街があるところとして著名である。脅迫電話をくり返す犯人は巧妙で逆探知を許さない。イ少年の死体は公園脇の排水路に捨てられていた。以上が韓国の「3大未解決事件」の概要だが、いずれも06年に時効となっている。
『造られた殺人』(15年)は、ノ・ドク監督作品。ある日、放送記者のもとに、連続殺人犯に関する情報提供の電話がかかってくる。提供者は女性で、言葉使いからして外国人のようだ。彼女の情報をもとに特ダネをものにしたと思った記者は、入手した犯人の手記が、「良辰殺人記」という小説の一部にすぎず、この情報がガセネタだったことを知る。
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