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2017/03/03

<韓国文化>光を求め、苦悩を生きた画家

  • 光を求め、苦悩を生きた画家

    呉日・作 「望郷」

 在日韓国人2世の画家、呉日(1939~2014)の回顧展「河正雄コレクション在日作家・呉日『無(ZERO)の叫び』」が、ソウル市の秀林アートセンターで3日に始まる(6月3日まで)。同展では油絵64点とドローイング16点をはじめ、約480冊のスケッチブック、写真などが展示される。呉日は広島県生まれ。太く力強い線と強烈な印象の原色が特徴。祖国への郷愁を感じさせる作品を数多く発表し、韓日両国で紹介されてきた。河正雄・光州市立美術館名誉館長(秀林文化財団理事長)に文章を寄せてもらった。

◆「在日のピカソ」目指し続けて  河正雄・光州市立美術館名誉館長◆

 先に河正雄コレクション呉日画伯追慕「きらら展」(会期2015年7月7日~7月11日)として日本の韓国文化院ギャラリーにて開催され話題となった。

 追ってこの度、ソウルの秀林文化財団主催にて河正雄コレクション在日作家呉日「無(ZERO)の叫び展」が開催(会期3月3日~6月3日)される事となった。

 偶然にも会期の3月5日は呉日の命日である事から、この度の展覧会は満3年の追慕展となった。

 在日の物故作家が韓日両国で追慕展が開かれる事は幸運な事であり、冥利に尽きる慶事である。

 遺族の話によると、この機会に遺言であった遺骨を故郷に眠る父母の墓の脇に埋葬するという。

 幸薄く、艱難辛苦の在日の一生であったが最後の最後、「帰郷」を遂げた事は喜ばしい事である。

 秀林文化財団創立者の金熙秀記念秀林アートセンターに於いて開催される事も在日作家としては特別なる意味と意義があるものと祝し、喜びたい。

 「ピカソは晩年に、輝く虚無思想で幕を閉じた。ゲーテも瞼を閉じる時〝もっと光を〟と願い、トルストイも神は光だと悟った。光は常に平等に注がれる。絵画思想で光を捉える時、天地の生命ドラマ、自然と画家人生の対象はこれら光の心象風景を与える者につきる。これを如何に捉え、考えたか、考え方を表現するのが絵画であると思う」

 1986年の機関誌「自由美術」に掲載された「光について」という呉日の文章の一節である。

 呉日の作品は本物がいないと成立しないといえる。彼は本物を越える事は無いと思ったかどうかは判らぬが、それを理解した上で、ひたすら己の芸術を磨いた。

 その地点、その境地まで何とか辿り着きたいという想いを死の日まで追い求めた本物の画家である。


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