韓国のソウル市立大学校と日本の昭和音楽大学は韓日交流事業に取り組み、音楽を通した韓日友好と相互理解に貢献してきた。家安勝利・昭和音楽大学国際交流・渉外担当部長に文章を寄せてもらった。
◆刺激し合い、ともに成長を 家安勝利・昭和音楽大学国際交流渉外担当部長◆
韓国にあって日本に無いものは何か。焼肉もキムチも日本に定着しているが、身近なところにまだまだ日本にないものがあるように感じる。
交流の中で感じる日韓の違い、それは観客の反応ではないだろうか。
日本でもロックやポップスのコンサートではステージと客席に熱い一体感があるが、ことクラシックのコンサートでは、日本人は非常におとなしい。ところが韓国ではクラシックの公演でも舞台に送る声援がすごい!
本当に感動した時には、立ち上がって心から割れるような声援を送る。そうした声援を受けることは、演奏家冥利につきると思う。
韓国と本格的な交流が始まったのは13年からだ。「高校生のための歌曲コンクール」(2000年より開始。今年で18回目を迎えるコンクール)の優秀賞副賞を「韓国の高校生と韓国でのコンサート」とした。
声楽家を目指す高校生の才能を伸ばすことが大きな目的だった。声楽を母体に発展してきた本学は、以前から韓国人声楽家の才能に注目してきた。声楽の分野では韓国は非常に力があり、世界中で多くの韓国人声楽家が活躍している。そんな韓国の同年代の高校生と共に演奏することは、演奏家の卵たちにとって、貴重な経験となると考えたのだ。14年・15年はコンサートを日本でも開催し、韓国の高校生に日本の文化を感じてもらった。
日本の高校生たちが、最初に韓国を訪問した時のことだ。初めは言葉が通じずお互い打ち解けにくかったが、そのうちに韓国の女子高生たちが、本番前の楽屋でメークを始めた。遠巻きに見ていた日本の高校生たちに、韓国の高校生たちが近寄ってきて、そうじゃない、こうしたほうがいいと、メークをしてくれたのだ。
こうして10代の女の子同士、急速に距離は縮まり楽屋は一気に華やいだ。高校生がばっちりとメーク 、韓国では当たり前らしいが、日本では先生が黙っていないだろう。
これを悪影響とするか、自分を自由に表現することを覚えて良しとするか、私は後者の立場だ。思い切り自分を出せる自由を味わうのは、感情を抑えがちな日本人には大事なことではないだろうか。
また、韓国の高校生たちは、いつも世界に出ることを考えている。日本人の場合は先ず国内で経験を積んでからというのが普通だろうが、韓国人は国内を飛ばしてすぐ海外へと考えるそうだ。国内音楽市場が狭い分、そういうこともあるかもしれないが、最近とみに内向きになりがちな日本の若者には刺激になったことだろう。
昨年からは、高校生の副賞のコンサートはないが、コンクールは海外にも門戸が開かれている(詳細は本学ホームページ参照)。
韓国を代表するソウル市の世宗文化会館が公演会場だった縁で、15年に同会館が毎年クリスマス時期にプロデュースしているソウル市少年少女合唱団による人気オペラ、子ども合唱オペラ「王子とクリスマス」(総勢約60名)を招聘し、本学のオペラ劇場、テアトロ・ジーリオ・ショウワ(1367席)で公演した。
韓国の朝鮮王朝最後の王子が庶民の生活に紛れ込み、そこで世界を知り成長していく話だ。混乱の時代に生きる韓国の少年の心情が、美しいメロディーにのって伝わってくる素晴らしいオペラで、合唱団の子どもたちが、かわいい小さな外交官になった。
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