声楽家の戸田志香(とだ・ゆきこ)さんが、韓日の高校生による声楽の音楽会をこのほど東京、神奈川で開催した。戸田さんに音楽会の紹介と主宰した思いを語ってもらった。
◆音楽会「響けよ 歌声」を主宰して 戸田 志香さん(声楽家、元二期会合唱団団員)◆
〝響けよ 歌声〟は韓国と日本の高校生による声楽の音楽会だ。8月31日にスタートを切った。会場は国立(くにたち)音楽大学附属高校・生徒ホールだ。
この音楽会には韓国の三つの芸術高校(仙和、京畿、桂園)から3人、日本からは国立音大附属高校の在校生4人が出演した。演奏はイタリア歌曲と母国の歌曲をソロで、そして日韓歌曲をアレンジした合唱曲を全員で歌った。
韓国からの3人を紹介しよう。
人なつっこい笑顔の金フィヨン君は桂園芸術高校2年生。
声楽家の両親がイタリア・ミラノ滞在中に生まれ、9歳まで暮らしていたフィヨン君は、「大韓民国を輝かせる声楽家になりたい」とプログラムに寄せた。ならば幼いころから声楽を勉強してきたのかと思いきや、指を折りながら「普通高校から芸高に編入してきた8カ月前だったかな?その時から始めたんです」。
演奏前の自己紹介、曲目紹介は日本語で行ったが、しっかり覚えてきた。それくらい覚えられなきゃダメでしょうと、両親から厳しく言われたとか。
イム・チェリンさんは京畿芸術高校の2年生だ。プログラムには「誠実で、真(まこと)の音楽家になりたい」と書いた。
学校内のオーディションで、日本での演奏会出演が決まった時には泣いてしまったチェリンさん。今回、全員で歌った韓国の歌に心が動いたらしく、「韓国の歌をもっと歌っていきたいって言ってるんです」と話してくれたチェリンさんの母、チョ・サンヒさんが娘に託したい思いはこうだ。「有名な声楽家にならなくてもいいんです。終生、歌と共に暮らしていけたら幸せなことです」。
背が高い金テハン君は仙和芸術高校の2年生。耳からイヤホンを離さず、いつも何かを聞いている。そしてどこででも歌っている。
韓国男子には徴兵の義務がある。しかし国際コンクールに入ると免除されるとか。ある期間とはいえ、歌うことから距離をおかざるを得なくなるテハン君は「カフェのように、音楽の聞ける場所がどこにでもあるドイツ」で歌っていきたいようだ。「感動を与える歌を歌いたい」がプログラムに寄せたテハン君のメッセージだ。
この3人は韓国歌曲を歌う前に、洪蘭坡作曲の「故郷の春」を斉唱した。日本では全くなじみのない韓国歌曲だが、韓国歌曲の先駆者・洪蘭坡は国立音大の前身校で学んだと聞いた。ならばと「故郷の春」を紹介し、韓国歌曲の演奏に入った。
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