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2018/12/14

<韓国文化>韓流シネマの散歩道 第39回 軍人政権時代の韓国                                     二松学舎大学 田村 紀之 客員教授

  • 韓流シネマの散歩道 第39回 軍人政権時代の韓国

    権力機関のスパイでっち上げ事件を追った『スパイネーション/自白』
    (右から2人目が崔承浩氏)

◆メディアと政治権力との距離は?◆

 1日、ポレポレ東中野で公開初日のドキュメンタリー映画2本、つまり、『スパイネーション/自白』(2016年)と『共犯者たち』(17年)を観てきた。ともに崔承浩監督による力作で、小さな劇場は超満員だった。これより少し前に封切られた『1987 ある闘いの真実』(17年、張駿桓監督)とあわせて、私の韓国体験と重なる部分の概略を述べてみたい。

 私がはじめてソウルの土を踏んだのは、70年代の半ば。それ以来、長期滞在や短期訪問を交えて、東京とソウル間を幾度往復したのか、20回位までは数えていたが、もうどうでもよくなって数えるのを止めた。長い定点観測となってしまったこの間、ソウル大学校には三度、客員教授としてお世話になった。

 「漢江の奇跡」と持てはやされた朴正熙政権時代の韓国は、どことなく重苦しく、それでいて街は喧噪に満ち、人々が忙しく動き回っていた。上記の『自白』に見るように、スパイ摘発事件が絶え間なく報じられていた。大学のキャンパスには私服がうごめき、私も何回か尋問されたことがある。

 とにかく、私は情報に飢えた。日本語新聞の韓国関連記事は、いたるところ検閲により切り取られていた。TVでの日本のニュースはというと、安田講堂を占拠した学生たちと機動隊との攻防戦の画面に、「赤軍派」を許すとこんなことになるぞ、というナレーションが被せられていた。

 たまに、


つづきは本紙へ