韓日両国で活躍するキム・ヨンジャ(金蓮子)さんが歌う「アモール・ファティ」が韓国で大ヒットし、日本でも6月に同曲を歌うコンサートを予定している。音楽プロデューサーの李喆雨(リ・チョルウ)さんに、キム・ヨンジャさんの現況について文章を寄せてもらった。
◆6月の川崎特別コンサートに寄せて 李 喆雨さん(音楽プロデューサー)◆
キム・ヨンジャさんが最近のインタビューで、「私の30年間の歌手生活を振り返ってみますと、単に演歌歌手という枠を超え、結果的には歌を中心にしたオールマイティーな芸能活動をしてきたという思いです」と語っているように、この間の活動は実に目覚ましく多彩で膨大なため、到底この稿では収まりきらないことをまずお断りしながら、その一端を特徴的に紹介したいと思う。
プロフィルは割愛するが、まずいえることは、演歌歌手として正道にしっかりと仕事をして大成しているということだ。そして、オーケストラとの共演、ジャズ世界への探求、ミュージカルへの挑戦など、様々な幅広いジャンルの音楽で活躍してきたが、その源は持って生まれた天性の歌唱力と天分、そして歌手としての素質をいかんなく発揮することができた結果であることは言うまでもない。
今回の川崎でのコンサートは、東日本大震災がきっかけで行われた「川崎=南相馬〝絆〟コンサート」の実行委員長である飯塚正良先生(川崎市議)が大の美空ひばりファンであり、キム・ヨンジャファンであることから、その実行委員会が母体となって取り組むことになった。
日本中のファンはもちろんのこと川崎在住のファンを掘り起こし、新しくできた会場にキム・ヨンジャさんを招き熱烈に歓迎するという意味で、まず地元での宣伝媒体であるミニコミ、タウン誌など地元での宣伝に力を入れている。
今回のコンサートの特徴は、韓国でのヒット曲「アモール・ファティ」を日本で初演することだ。「アモール・ファティ」が韓国で大ブレークしたきっかけはこうだ。16年12月に行われた「開かれた音楽会」という有名なTV番組で、キム・ヨンジャさんがアイドルグループのEXOの次の出番だったため、観客がEXOのファンである若い層だったのだが、この歌が受けて観客の口コミで広がりはじめ17年にヒットした。曲名「アモール・ファティ」は、ドイツの著名な哲学者ニーチェによって提唱された哲学用語の「運命愛」という意味である。
自身の運命にただ寄り添うだけでなく、自身の運命を愛し肯定的に受け入れることで人間本来の創造性を発揮することができるということだ。特に、〝年齢は数字、心は真実、心躍るように行えばよい、恋愛は必修、結婚は選択、心躍るように行えばよい〟という歌詞が若者の心をとらえた。
いまや若い世代をはじめ韓国では知らない人がいないくらいの人気で、動画再生回数が400万回に迫っている。この歌を聞くたび泣くという人もおり、人生が変わったという人もいるという。
これからのことについては直接聞いてはいないが、「オモニの韓国料理」(角川出版、2001年)の〝あとがき〟で、こんなことを言っている。
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