◆日本文学が人気、映画化も◆
京マチ子逝く。大女優、グランプリ女優などなど、彼女に捧げられた讃辞は枚挙にいとまがない。しかし白井佳夫の、「戦後日本を象徴したスター」という表現には意表を突かれた(日経、5月16日号)。のちに巨匠と呼ばれた監督たちが競って撮りまくった彼女は、たしかに「象徴」そのものだった。
彼女を偲ぶ矢先に、ポン・ジュノ監督の『パラサイト』が、カンヌ映画祭でパルム・ドール(最高賞)を獲得、というビッグ・ニュースが飛び込んできた。韓国では初の、そして東アジアでは昨年の『万引き家族』に次ぐ快挙である。いつ、誰が受賞してもおかしくないほどに人材豊富な韓国映画界、ライバル意識をむき出しにした傑作が続出することを期待したい。
ところで、韓国でベストセラーとなったチョ・ナムジュ著の小説、『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)が日本でも好評のようだ。韓国ものは売れないという、これまでの「常識」を打破したことを祝したい。本紙5月17日号によれば、ソウル大学中央図書館の18学年度貸出し回数で、同書がトップだったという。本国での人気も衰えていない。
ただ、韓国では日本語の作品が大量に翻訳され、庶民に受け容れられており、日本文学の圧倒的な「輸出超過」になっているという事実にも注目しておこう。
韓流人気が音楽や映像ばかりでなく、文字や書画の世界にまで拡大してゆき、総合的で双方向的な文化交流となることを希求したい。政治次元では雲行きの怪しい日韓関係だが、一般の国民レベルでの韓流・日流ブームの基調に不安はない。
明治以降の日本文学では、やはり芥川龍之介の人気が根強い。芥川は中国に旅行したおり、章炳麟から、もっとも嫌いな日本人は桃太郎だと聞かされ、これに刺激をうけて短編「桃太郎」を書いた。また「金将軍」は、韓国の古典『壬辰録』に題材を求めたもの。
要するに彼の作品には、日本の植民地主義を痛烈に批判したものが多い。(拙著『近代朝鮮と明治日本』参照)。芥川のほか、韓国併合を嘆いた啄木に人気が集中するのは自然の流れだろう。
また現代作家では、
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