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2020/04/10

<韓国文化>韓流シネマの散歩道 韓国映画にみる「天国と地獄」  第50回                                     二松学舎大学 田村 紀之 客員教授

◆貧富格差、宗教観を表現◆

 奉俊昊(ポンジュノ)『パラサイト 半地下の家族』について、とくに日本では、黒澤明『天国と地獄』と比較する論調が圧倒的に多い。確かに後者が、貧富の極端な差を見事に対比している点では先駆的だった。しかし貧者が富者の家に入り込み、実質的に富者を支配してしまうというモチーフは黒澤映画にはない。

 むしろ前回指摘したように、金綺泳(キムギヨン)『下女』のアイデアを膨らませたものと見たほうが面白い。いずれにせよ、圧倒的な貧富の格差を地獄と天国とに見立てるという意味で、三人は共通の視点に立っている。


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