◆世界の誰もが共感できる映画を◆
映画史家の四方田犬彦は今世紀に入ってからの日本映画の「沈没」に関し、つぎのような辛辣な苦言を呈している。すなわち、「日本映画は〈日本人とは何か〉という主題から目を逸らし、単発的な喜劇とシニシズムのうちに埋没した。
そのため〈韓国人とは、韓国史とは何か〉という強烈な主題意識に裏打ちされている韓国映画に対抗することができず、どんどん失地を重ねていった。日本語でのみ語られる日本映画は、日本人だけを対象として、きわめて内向的な形で製作され続けていった」(『日本映画史110年』、集英社)。彼のこの韓国映画論は、近日刊行予定の拙稿「ナショナルなものへの回帰」(『国際政経論集』、二松学舎大)でも再論したい。
四方田犬彦の指摘通り、韓国映画は外国進出を続け、『パラサイト 半地下の家族』でのアカデミー賞獲得に至る。
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