朝鮮王朝時代の超絶技巧「烙画」をはじめとする、世界初5カ国烙画の美術書「定本焼絵考日本・中国・韓国・ロシア・インドネシアの焼絵」(田部隆幸著、誠文堂新光社、A4判、304㌻、オールカラー、税込2970円)がこのほど発刊された。著者の田部隆幸さん(東京民藝協会会員、日本陶磁協会会員)に自著について寄稿してもらった。
烙画とは金属製のこて、火ばしを熱し紙・絹・木・竹に描き、茶色に焦がされる温度の度合で濃淡を表現する画法で、韓国では烙画、日本では焼絵、海外ではPyrographyと呼称される。韓国では17世紀初頭から存在し、韓国独自の画法と喧伝されている。
民芸の柳宗悦が1937年、濱田庄司たちと全羅南道を訪問して烙画を見たとき、壁に丸い穴を空け、室外にこん炉を置き、そこに何本もの金属棒を入れ炭で加熱し、煙の一酸化炭素中毒を避け、棒を手のヒラ近くに持ってきて温度加減で色合いを調節する技術力に驚いたことが記録されている。
筆者は、先祖が所有していた韓国の烙画に関心を持ったことがきっかけで、国会図書館で調査を行った。そして1882(明治15)年に明治政府による西洋画の推進等から、法律で展覧会に出品禁止を行っていることが判明した。
美術史の大学教授、骨董商にも聞いたが全くわからなかったので、駐日大韓民国大使館に相談に行くと韓国文化院の紹介を受けた事が発端で、烙画について独自に調査研究を始めた。その過程で、独立運動家の呉世昌著『槿域書画徴』に烙画の記述があることを知った。また韓国・日本・中国・ロシア・インドネシアの5カ国に烙画の歴史があることを知った。
その5カ国の烙画の特徴だが、韓国は一貫して格調の高い、文人画的な烙画を描いているのが特質である。日本では江戸時代の大名、儒学者、浮世絵師が和紙に動物、植物、魚など銘々の図柄を焼絵している。
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