パニックアクション『白頭山大噴火』が27日、東京・TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開される。北朝鮮と中国の国境付近に位置する火山・白頭山(ペクトゥサン)で、観測史上最大の噴火が発生した。韓半島を崩壊させるさらなる大噴火が75時間後に起こると予測され、韓国軍爆発物処理班が北朝鮮へ潜入、火山の沈静化を図る極秘作戦に乗り出すが 。鄭憲・アジアン美容クリニック院長に映画評をお願いした。
地球の表面は十数枚の固い岩石の板からなるプレートで覆われている。このプレート同士が大きな力で押し合い、一方が地下に潜り込みながら摩擦が起きる。その過程で重なり、下方に滑り込んだプレートが弾かれる現象によって地震が発生する。さらに、地震を起こすプレートの移動が地下のマントルにあるマグマ量や噴出圧力を増加させることで、火山の噴火にも関連してくる。
「地震大国日本」には、全世界の7~8%にあたる111の活火山があり、常に綿密な観測下に置かれている。それに比べ、朝鮮半島に存在する活火山は、北朝鮮の両江道と中国の吉林省との国境上に位置する白頭山(標高2744㍍)のみである。ところがこの白頭山、ただの活火山ではない。過去およそ1000年に一度の頻度で発生してきた大噴火の規模は、今世紀内では最大規模に相当し、ポンペイを壊滅させたイタリアのベスビオ火山噴火よりはるかに巨大であったとされる。しかし、現在の北朝鮮政情下では十分な国際的調査や観測が行われているとは言い難い。
韓国ドラマで知られる「朱蒙(東明聖王)」が建国し「広開土大王(好太王)」の時に最盛期を迎えた強国「高句麗」の滅亡後、その遺民「大祚栄」によって設立された渤海国。日本とは遣唐使ならぬ遣渤海使の往来も盛んであった謎多き大国だが、渤海の滅亡にも10世紀に起きた世界最大級の白頭山の大噴火が関わっていたという説がある。その後、約100年間隔で小規模の噴火は起きてはいるが、それも最後に確認されたのは1902年である。最近の中国の地質学者による白頭山の火山活動の活発化やマグマの上昇報告が伝えられる中、直近の大噴火より既に1000年が過ぎている。
新たな噴火の可能性が憂慮される白頭山への関心が集まるタイミングで制作された映画が『白頭山大噴火』(原題・白頭山)だ。2019年、韓国で上映されるや観客動員数820万人越えの大ヒットとなり、世界でも90カ国以上に配給された。今は北朝鮮領内で、実際に訪れることはかなわない「朝鮮民族の聖地」白頭山の一大事という観点での注目度もあるが、やはり作品自体のエンターテインメント性の高さに対する評価と言って良いだろう。現時点で最も旬と言えるキャスティングだけでも作品への期待が膨らむ。
彼らの存在感を十分に生かしたストーリー展開、それを支えたのが『パラサイト半地下の家族』(2019)、『神と共に』(17~18)やNetflix作品などで世界的評価を得ている韓国デクスタースタジオによる高度なVFX技術を用いた特殊映像であった。今まで私達がSFやアクションスペクタクル作品で感じたハリウッド映画への劣等感は、過去のものであると実感させてくれる。
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