若手人気俳優のカン・ハヌルとチョン・ウヒが共演したラブストーリー『雨とあなたの物語』が17日、東京・シネマート新宿ほか全国順次公開される。『怪しい顧客たち』(11年)で一躍脚光を浴びたチョ・ジンモ監督による、2003年のソウルを舞台にしたラブストーリーだ。鄭憲アジアン美容クリニック院長に映画評を寄せてもらった。
「就能試験」の重圧
今回紹介する映画の舞台は2003年、ソウルのとある大学予備校である。多くの若者が未来の為、正確にはより就職に有利な有名大学に入学するために、日本の大学入学共通テストにあたる大学就学能力試験(通称:就能=スヌン)の準備に励む。
2000年代以降、大学進学率は世界有数の高さを誇る韓国において、国公立、私立の区別なく韓国の受験生ほぼ全員が受けるスヌンは、ある意味、年に一度の国民的行事となった。
先日も朝寝坊した受験生の親からのSOSで警察が出動、受験会場まで無事護送したことがニュースで伝えられた。その他、騒音を考慮して航空機も会場付近での飛行を制限するなどは当たり前、さらに今年はコロナ感染に対する対応も徹底して行われるなど、国を挙げて最大限サポート体制が敷かれた。
それはつまり、韓国が世界一と評価される子供の教育に対する意識の高さを示す一方、受験生本人たちへのかかるプレッシャーも計り知れないと言える。
映画『雨とあなたの物語』の主人公ヨンホも、教育競争の真っただ中にいる2浪中の受験生である。韓国風に言えば3修(サムス)生、修能(スヌン)試験を3回目受けるという意味だが、歳も数え年で表現する韓国ではあるが、こちらは数が一つ増えるだけで重圧は何倍にも感じるのではないか。
さらに男子の場合は軍へ入隊する兵役のタイミングもあるため、1年1年が非常に重要である。
大学進学の必要性は承知しつつも、はっきりした目標も夢もなく、それゆえ、勉強にも身が入らない生活を送るヨンホ(カン・ハヌル)。ある日、彼の心の中に大切に残されていた、小学生時代のある少女に対する淡い思い出がよみがえり、記憶の中の名前〝ソヨン〟宛に手紙を出す。
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