◆家族に対する「高純度の執着心」◆
闇の仕事を請け負う口のきけない青年と、両親に身代金を払ってもらえない孤独な少女の交流を描いたサスペンスドラマ『声もなく』が21日、東京・シネマート新宿ほか全国順次公開される。鄭憲アジアン美容クリニック院長に映画評を寄せてもらった。
2000年以降、特にここ数年の韓国エンターテインメント分野における目覚ましい成果は特筆すべきであろう。
ポップミュージック界ではBTS(防弾少年団)が世界的な、それも頂点を極める勢いの人気、評価を受け、映画界は一昨年のアカデミ―賞作品賞、昨年度は助演女優賞を獲得、そしてドラマでは動画配信サービスの流れに乗って全世界で視聴者数トップの作品を連発している。
この現状を、日本のメディアでは「エンターテインメント産業育成を掲げて国策としての戦略の結果」との論調をよく見受ける。もちろん、何らかの政策的な試みはあるにしても、果たしてそれだけで説明できるものか?
国によるサポートはあるに越したことはない。しかし、それで世界的アーティストが誕生し、人々の心を捉える映画、ドラマ作品が次々生まれるとは限らない。それらとは別に、国を越えて多くの人々をひきつける何か、韓流コンテンツの歌やダンス、映画やドラマに内包するプラスアルファとしての〝ファクターX〟は何だろうか。私なりに思い巡らした結果、その一つと考えているのが、家族(時には親しい仲間、友人、異性)に対する「高純度の執着心」ではないかと。
少し前に米国のピュー研究所の調査報告がある日本の雑誌で紹介されたが、少し意外な結果であった。17カ国を対象に「人生を意味のあるものにするものは何か?」のアンケートに関して様々な角度で分析したものだが、17カ国中14カ国が「家族」を第一に挙げたが、唯一、韓国人は「物質的な豊かさ」という回答が最も多かった。
しかし、この調査結果をもって、韓国では家族を重要視していないという主張はミスリードと私は考える。報告書をよく読んでみると、複数の回答が多かった国では「物質的豊かさ」の割合は韓国より高い国も多かった。逆に韓国は回答項目が少なく、同程度の比率の中で若干「物質的な豊かさ」が「家族」「健康」を上回った結果だ。さらに個人的な解釈を加えると、韓国人にとって家族は「人生を意味あるもの云々」以前に切っても切り離せないものであり、あえて項目として挙げるまでもない存在ではないか。
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