拉致・誘拐や監禁ものは、これまでに類例が山ほどある。そのためこのテーマに臨もうとする映画作家たちは、なんとか新味を出そうと四苦八苦する。ストーリーの意外性、脚本とカメラワークの巧さ、俳優の演技力という難所のどれかを乗り越えないかぎり、凡作扱いされて観客にそっぽを向かれる。
陳腐なテーマへの挑戦には勇気が必要なのだ。かつて取り上げた韓国映画『オールド・ボーイ』(13年)は、これらの難所を見事にこなしていた。
黄晸民主演の『人質韓国トップスター誘拐事件』(21年)は、彼がその名声のゆえに拉致監禁されるという、意表をついた設定が功を奏した。
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