以前に、北朝鮮工作員の甘言に乗って入北する在独経済学者の映画『出国造られた工作員』(18年、本欄45)を紹介した。自進入北し拉致された妻とともに脱出する崔銀姫・申相玉『闇からの谺』(文春文庫)はスリル満点の手記だった。
『不思議の国の数学者』(22年、パク・ドンフン監督)で名優・崔珉植が演じるのは天才数学者ハクソン。彼は、その才能が軍事利用だけにしか生かされないことに絶望し脱北するが、韓国では高校の用務員暮らしを余儀なくされる。
たまたま出会ったのが、ジウという数学嫌いの同校生(キム・ドンフィ)。ハクソンはジウを数学の世界へと誘い、その美しく不思議な魅力の虜にしてしまう。ただし、この辺りから監督の数学観が問われる。
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