◆「色彩が象徴する世相の変化◆
スタンダールの『赤と黒』は、野心に燃えた身分の低い若者に残された選択肢が、兵隊になって出世するか聖職者の道を選ぶかのいずれしかないという現実を、赤と黒という色の対比で象徴した名作だった。このテーマは本国のフランスだけでなく、各国で幾度も翻案され、映像化や演劇化されてきた。
古来、人類は光を象徴する太陽を崇め、暗闇を怖れてきた。東洋の陰陽説は、西洋でも地獄と極楽(天国)を対比する考えの基盤をなしてきた。
ところが近代になって、色彩感覚にも変化が生じ、多様な意味合いを持たせるようになった。例えばロシア革命前後では、赤(紅)は社会(共産)主義者、白は王統派、そして黒はアナキストの旗印となった。最近では、ローマ教皇の「白旗発言」が物議をかもしている。
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