◆社会の底辺で生きる人々◆
李朝第16代国王の仁祖の世子(後継者)である昭顕は、8年の長きにわたる清国での人質生活を終えて帰国するが、ほどなくして変死する。
この史実に盲目の鍼医ギョンスをからませて極上の時代劇サスペンスに仕上げたのがアン・テジン監督の『梟フクロウ』(22年)。
仕掛けの半分はタイトルそのものが暗示している。すなわち、鍼医ギョンスは、夜はわずかに明かりが見える「昼盲症」だったのだ。
この映画の主人公はいうまでもなくギョンス。「お前のような身分の低いものは本来、宮廷に出入りすることさえ不可能なのだ」と面罵されながらも、無表情にこの罵声を受け流し医務に励むギョンス役の柳俊烈、そして世子役の金聖喆、さらにはその他の脇役陣の演技に舌を巻く。
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