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2001/08/31

<韓国経済>韓米通商摩擦が拡大

 韓国の最大貿易相手国であり、主要輸出市場である米国との経済摩擦が深まっている。ブッシュ政権発足後、対北関係をはじめとする政治・外交問題の影響が、経済にまで飛び火している格好だ。業界では、米国との経済摩擦が拡大すれば、韓国経済は危機的打撃を受けると警鐘を鳴らしており、政府の積極的な対応が必要だと指摘している。

 最近、ハイニックス半導体をめぐる問題が最大の懸案事項として浮上してきた。ハイニックスと米マイクロンテクノロジー社の生き残りをかけた争いが、政府間の軋轢にまで発展してきたからだ。

 始まりは、ドナルド・エバンス商務長官が張在植・産業資源部長官に、ハイニックスの債権団の出資転換計画に抗議する手紙を送ってきたことだ。オニール財務長官も、陳稔・副総理兼財政経済部長官に同じようなメッセージを送り、不満を吐露するなど、米国政府が直接韓国政府に働きかけるようになった。最近では米の金融界まで加わりだした。何かことが起こると、共同歩調をとる米金融界の特性から、紛争は長期化する見通しだ。

 半導体だけではない。ブッシュ政権は、韓国の自動車輸入(1万1000台)が少ないと、自動車問題を持ち出してきた。特に米国車の輸入が2500台に過ぎないのは、韓国政府による貿易障壁が原因だと主張、米国側は輸入関税率(8%)がEU(欧州連合)や日本より低いことをあげ、是正を求めている。

 これに対して韓国政府は、タクシー用として輸入車を導入したり、警察のパトカーを輸入車に代えるなど苦慮しているが、米国を納得させるは容易ではない。

 さらに鉄鋼分野でも摩擦が起きている。米国は6月からセーフガード(緊急の輸入制限措置)発動のため、産業被害の調査を行っている。韓国はEU、日本などと共に、「世界鉄鋼貿易の秩序を乱す可能性がある」と抗議したが、米国は調査を強行する意思を撤回する様子はみられない。セーフガードが発動されると、昨年10億㌦を超えていた対米鉄鋼輸出は、30%以上減少し、大きな打撃を受けることになる。

 一方、米国の韓国製品に対する反ダンピング関税付加件数は昨年末の19件から7月末現在22件に増え、大きな問題となっている。また、米連邦航空局(FAA)が韓国の航空安全管理体制の評価を第2級に格下げしたことに対し、政治的意図があるのではないかと不満の声があがっている。

 このほか、大宇自動車のGMへの売却問題、AIGの現代投資信託の引き受けなど、韓米間には懸案事項が山積しており、今後の政府の対応が注目される。