サムスンは、昨年史上最高の利益を上げたのに合わせて、大規模な昇進人事を断行した。また、李健煕会長の長男、在鎔氏をサムスン電子の常務補に抜てき、本格的な後継体制に入った。サムスンは、在鎔氏に経営全般を任せる段階ではないと話してはいるが、経営能力次第では「3代目」が経営の第一線に立つことも予想され、世襲人事に波紋が広がっている。
今回の人事で李健煕会長の長男、在鎔氏(32)がサムスン電子の常務補に就任したことは、李会長の後継者を内外に向けて告知したことになる。在鎔氏は今後、行動範囲を広げ、サムスン電子はもちろん、グループ全体の業務に少しずつ携わり、徐々にグループ経営の表舞台に出るものと見られている。
在鎔氏は、形式上はサムスン電子経営企画チームに所属する。経営企画チームは事業戦略グループと未来戦略グループを軸に、いくつかの戦略チームで構成されており、在鎔氏は未来戦略チームで業務をこなすことになる。サムスン電子の企業価値を高め、株主の利益を極大化するための中長期的な経営戦略を樹立するのが主な仕事だ。
在鎔氏はマスコミの報道とは異なり、インターネット事業よりもコンピューターなど製造部門に関心が高いようで、彼は慶応大学留学中に「日本の製造業の産業協力に関する考察」という論文を書き、修士号を受けている。ハーバード大学の博士課程でもコンピューター産業の未来を集中的に研究した。
現在、在鎔氏は、サムスン電子の部長として米国に滞在中だ。ウォール街でメリルリンチのコマンスキー会長など金融界の大物と頻繁に接触していると伝えられている。また新技術開発に関心が高く、先端企業のR&D(研究開発)センターを訪れ、技術者らと交流を重ねているといわれている。
在鎔氏は、サムスンの持ち株会社エバーランドの株式の25・1%を保有する筆頭株主で、エバーランドが系列社を支配しているサムスン生命の大株主(19・3%)であることから、事実上、サムスングループを支配している。
従って、在鎔氏がグループの経営を引き継ぐのは時間の問題と見られている。しかし、財閥の世襲経営に対して、少数株主や市民団体などから反対の声が挙がっており、後継の時期は不透明だ。また、李会長が健在なうちは、後継話が表に出ることはないとの見方もあり、しばらくは「帝王学」の修得に専念するもようだ。