韓国経済は、97年末の通貨危機を2年で克服し、IMF(国際通貨基金)体制から完全脱皮したかに思えたが、企業と金融の構造調整の遅延、大宇自動車、東亜建設産業など大型企業の倒産、不良企業の統合・整理に伴うリストラ、株価の低迷などで再び成長に陰りが見え始めた。昨年は上期の好景気に支えられGDP成長率が9%台を維持したが、2001年は5・3%(韓国銀行予測)まで落ち込む見通しだ。
世界的な景気の落ち込みが懸念されるなか、今年の韓国経済はどうなるのか。主要シンクタンクの分析を紹介する。
<KDI>
2001年の経済展望は、原油価格高騰の時差的影響が表れ、構造調整による一時的ショックを考慮すると、成長率は5%台前半になるだろう。構造調整が不振に終わり、金融不安が持続または増幅する場合には、景気が急速に低下する可能性もある。
設備投資は成長鈍化などで7%内外に下落すると予想されるが、建設投資は先行指標の推移を考慮すると小幅ながら増加に転じると思われる。
輸出は、輸出単価の上昇や世界経済の鈍化と交易条件の悪化など悪条件もあるが、70億㌦の黒字を確保できるだろう。しかし増加率は11―15%水準に鈍る。
物価は、成長鈍化と需要減退で上昇圧力が弱まるにもかかわらず、原油価格高騰の余波などで3%台の上昇率となるもようだ。
<韓国銀行>
2001年の韓国経済は、内外の景気鈍化により年間のGDP成長率は5・3%程度の低い数値が予想される。
民間消費は構造調整による雇用不安、実質所得の伸び鈍化などで消費心理が委縮し、増加率は減少する見込みだ。
設備投資は、99年と2000年にそれぞれ40%近い大幅な伸びを見せたが、今年は消費および輸出の鈍化、企業の構造調整などの影響でわずかな増加にとどまるとみられる。建設投資は相変わらず不振ではあるが、小幅ながら増加に転じると期待される。
輸出は、世界の景気鈍化で貿易量が縮小し、米国などの主要輸出相手国の成長鈍化もあって、前年に比べて落ち込むとみられるが、10%を上回る増加率の達成は可能だろう。
経常収支は98年からの黒字基調を維持すると思われるが、黒字幅は45億㌦前後に縮小するもようだ。商品収支黒字(貿易収支にサービス収支などを加えたもの)は今年の165億㌦から125億㌦に減る。
輸出は、米国など世界経済の成長鈍化、半導体の価格下落などで伸び率が大幅鈍化するとみられる。輸入も国内需要の鈍化と国際原油価格の高騰でかなり鈍ると予想されるが、輸出よりも高い増加率を示すと予想される。
サービス・所得・移転収支は、韓国人の海外旅行増加や特許権使用料の負担増大で赤字幅はさらに拡大すると思われる。
消費者物価は、景気の鈍化で需要による上昇圧力はないと思われるが、石油価格高騰によるエネルギー税制改革で石油税が引き上げられるほか、医療保険をはじめとする公共料金の引き上げで、2000年よりも高い年平均3・7%程度の上昇率を示すとみられる。
<サムスン経済研究所>
韓国経済を取りまく環境は不安定な状況にある。特に金融不安、半導体の景気冷却、原油価格の高騰が今後の韓国経済の決定的なリスク要因になる。成長の弾力性が鈍っており、2001年の展望は、対内的には企業・金融構造調整の進展による金融市場の機能回復、対外的には主要輸出商品の価格変化と為替の推移がカギを握るだろう。
来年の経済成長率は2000年に比べて3ポイント以上下落した5・7%で、潜在成長率水準に近づく。
上期中は企業の撤退、失業の増加で国内の消費が激減し、信用低下の持続による投資財源の確保難で設備投資も鈍るもようだ。一方、下期は輸入の激減で輸出が成長に寄与し、資本市場の機能回復で内需不振が多少緩和されると期待される。
しかしながら、GNI(国民総所得)で評価される2001年の体感景気は、半導体価格の下落で貿易環境が悪化することもあり、成長率の5・7%を下回ると予想される。
通貨危機以降、経済回復は急速に進んだが、いまだに景気は天井を打っておらず、今後の構造調整が円滑に進まなければ、回復局面さえも崩れる。
景気の回復でわずかながら増加傾向を維持してきた民間消費は、2001年には景気低迷による消費減退で4・9%増にとどまる見込みだ。
原油価格高騰による物価上昇、株価暴落、半導体の価格下落、金融不安、失業増加など経済の不安要因が多い。
2001年の消費者物価は2000年よりも高い3・4%の上昇を示すと予想される。国際原油価格の上昇に2001年は公共料金の追加引き上げ、エネルギー税制改革が加わり、物価上昇要因として働くもようだ。
しかし、最近になって顕著になってきたデジタル効果と市場開放効果などで、過去のような急激な物価上昇はないと予想される(ちなみに90|97年の消費者物価上昇率は年平均6・1%)。
IT産業の発展による生産性向上などで、情報通信の価格は下落している。またサイバーモールの拡散と流通革命の進展が価格安定を誘導する。サイバーモールは、96年以前は21件にすぎなかったが、2000年8月現在で1843件に急増、大型ディスカウント店も96年には4軒だったが、2000年2月現在で135軒に増えている。
2000年に下降傾向を見せていた失業率は、景気の鈍化で多少増加に転じ、4・3%を記録すると予想される。これは好況業種であっても今後の経営環境が不透明なことから雇用に消極的なためだ。通貨危機以後に企業は雇用の見直しを図り、スリム化する傾向にあり、たとえ成長が続いても、通貨危機以前のような2%台の失業率まで改善することは望めない。不良企業の整理と金融の構造調整が本格化すると約5万人の追加失業者が出る。
世界経済は昨年よりも低迷し、半導体の価格下落などでIT関連品目の輸出増加率が低下するとみられ、輸出増加率は9・6%にとどまる見込みだ。
一方、昨年高騰した国際原油価格が落ち着き、また設備投資が鈍ることから資本財の輸入が大幅鈍化する。原資材の輸入は昨年より大幅減り、13・5%増にとどまる見込みだ。ただし、輸入先多角化制度の廃止などにより、消費財の輸入はかなり増えると予想される。
2001年の経常収支は63・6億㌦の黒字を記録し、98年からの黒字基調を維持するもようだ。貿易収支は82・4億㌦に達する見込み。これにより商品収支(貿易収支にサービス収支などを加えたもの)は123・6億㌦を記録することが予想される。
その半面、金融利子支払いおよび為替自由化の影響で、所得収支、移転収支など貿易外収支は60億㌦の赤字になるもようだ。