今年は韓日国交正常化から38年になる。経済的には関係を強めており、日本に進出している企業も駐日韓国企業連合会の加盟社だけで300社を越す。経済的パイプは太くなっているが、課題も多い。グローバル化時代を迎えて新たな課題も増えている。日本市場とどう向き合うべきなのか、韓国貿易協会東京支部と共催で駐日韓国企業座談会を開き、ざっくばらんに話し合ってもらった。
出席者 現代ジャパン 金ジョンシク社長(駐日韓国企業連合会
会長)
国民銀行 林在賢東京支店長
韓国観光公社 申喜秀東京支店長
韓国貿易協会 権寧旭東京支部長
写真:左より各出席者
司会 金時文 本紙編集局長
司会 はじめに日本とのかかわりをお聞かせください。日本でどんな活動をしていますか。
金社長 日本勤務は2度目で、合わせて11年ほどになる。
業務は現代グループの商社部門を担当しており、活動としては、機械、鉄鋼をはじめエネルギー、石油化学、情報通信、流通関係と幅広い分野で韓日間の貿易を促進しているが、ウエートが重工業からサービス部門に移りつつある。
林支店長 駐日韓国企業や、在日同胞に対する融資などを行っている。一昨年の11月1日に国民銀行は韓国住宅銀行が合併して、行名が国民銀行になった。
私は日本に来て4年目になる。日本はいま不況の中で厳しいものの、韓国系の銀行は取引先が日本の普通銀行と違うので業務的にそれほど悪影響はない。
申支社長 韓国観光公社は、日本人観光客を韓国へ誘致するために、マスコミを通じて韓国の観光を幅広くPRすることを主要業務にしている。日本の旅行業界が韓国旅行商品を企画するにあたってバックアップや日本市場での調査も大きな役割だ。
一昨年9月に発生した米同時多発テロの影響で韓日の旅行業界は大きな打撃を受けて、営業面でかなり苦戦を強いられている。昨年の場合、6月までは前年比16・2%減だった。
下半期に入り9月は12%、10月35%、11月も33%の伸びを示し、数字的には回復しつつあると言えるが、利益は韓日の旅行社とも厳しいものがある。
権支部長 本社である韓国貿易協会は経済4団体の1つで、1946年7月に設立された。東京支社は2年後に設立され、今は東京支部という名称に変わっているが、歴史は今年で55年になる。
対日輸出が中心業務で、93年に駐日韓国企業連合会が設立さてからは、その事務局としての役割を果たしている。日本で勤務するのは2度目、6年になる。
司会 日本経済は12年不況から這い上がれない状況ですが、日本の現状をどう見ていますか。
金社長 韓国はこれまで日本を真似して成長してきた。1965年の韓日国交正常化以降30年以上もの間、日本に追い付こうと必死だった。しかし97年の通貨危機を経てみると、日本は不況の最中にあり、その後どんどん厳しくなっている。代わりに中国市場が急浮上、すでに2001年に対中輸出は対日輸出規模を上回り、韓国としては現実的に中国を重視する流れになっている。
駐日韓国企業から日本経済を見ると、早期に構造改革を実行する必要がある。それは当たり前のことだが、早く実行しなければならない。
第2は早い意思決定が必要だということだ。3つ目は、産業構造と国際協力構造の改編が必要であり、4つ目はグローバル化を叫んでいるが、それが遅れている。第5は、未来に対して自信がないように思えるので自信を持ってほしい。このような問題すべて金融機関から始まったのではないかと思う。
林支店長 金融機関は、韓国も日本と同じ問題を抱えていた。しかし、韓国は早めに構造改革を実施、合併の問題を除き内容的にはほとんど終わっている。やはりオーバーバンキングであった。国家の規模から見ると3、4行が適当であり、これからも合併が続く見込みだ。
日本も合併はしたが、内容的にまだ整理できていないようで、資金があっても融資先がなく、国の発行した債券を買うしかないという状況だ。従って産業に資金が行き渡らないという問題がある。これから構造改革が行われるので、取引先の話では、経済がさらに悪化するという懸念があるようだ。
申支社長 日本市場の現状をそのまま表しているのが株価だ。元気がない。昨年は1万円割れし、8000円台が何カ月も続いている。
米国市場が上がっても日本の株価は上がらない。問題がたくさん残っているということを市場が示している。
権支部長 日本市場の開拓の難しさは、長期不況による消費不振に第1の原因がある。つまり需要がないので輸出が伸びない。次にクォータ制や認証制度などの非関税障壁問題がある。
第3は、日本が韓国製品にかける関税は韓国が日本製品にかける関税よりも低いが、韓国が日本に集中的に輸出できる農水産物や化学製品などの品目は非常に高い。
第4は日本での韓国製品のブランドイメージが、欧米市場における韓国製品のブランドイメージに比べ非常に低いことだ。昨年の対日輸出の現状は1-11月で139億ドル、前年同期比9.5%のマイナスだった。
日本市場開拓の成功例は、輸出が減っているときにはなかなか探しにくい。その中でも頑張っている企業を3つのグループに分けることができる。
まずニッチ(隙間)市場頑張っている家電メーカーが第1のグループ。第2のグループは、専門に特化した企業。例えば、切花がある。遠くオランダから切花が日本向けに輸出されているのなら、近い韓国で出来ないわけがないということで、業績は伸びている。第3のグループは、自社ブランドで売り出した通信販売があげられる。まだ成功とまではいっていないが、例えば韓国で炊飯器を作っているクックホームシスはもともとナショナルのOEM(相手先ブランド)生産をしていたが、自社ブランドでも十分可能性があることが分かった。
いずれにしても日本市場開拓は厳しいのが現実だが、一度は取引すれば長期供給ができるという大きな魅力がある。
林支店長 日本の経済が良くないが、これは逆に言えば韓国の金融機関としてはチャンスだ。韓国の信用等級が上がれば、資金調達が容易になり、調達金利を低くなる。(つづく)