政府は、急速な高齢化に備えて定年を法律で60歳に定め、公企業はもちろん民間企業にもこれを順守させる方針だ。現在の法律は罰則規定がないため順守されないケースが多い。現在の韓国企業の定年は平均57歳で、2008年までに60歳に引き上げる。
青瓦台(大統領府)の人口・高齢化社会対策チームは19日、低出産・高齢化時代に備えた「20の国家実践戦略方案」を発表、2008年をめどに定年を60歳にし、その後5年ごとに1歳ずつ引き上げ、2033年に65歳にする案を提示した。
これと関連して政府は、勤労者の年齢を理由に採用や解雇時に差別することを禁止する「雇用平等促進に関する法律」を今年中に策定し、来年から施行する計画だ。また、経営側が定年延長を理由に賃金を引き下げた場合、その一部を政府が支援する「賃金調整オプション制」の導入も検討する。
権奇洪・労働部長官は、「各種の奨励策を通じて企業が定年を延長するよう誘導していく方針だ」と述べ、定年退職した人を再雇用したり、定年を過ぎても引き続き企業が雇用する場合には、補助金を支給し、法人税を減免するなどの優遇策を講じる考えだ。
こういった政府の定年延長政策について、韓国経営者総協会は意見書を発表し、「定年延長に政府は介入すべきではなく、企業自らが決定する問題だ」と反発している。
韓国社会では、「沙悟浄」(四五定=45歳で定年)、「五六島」(五六盗=56歳まで働いたら泥棒)という言葉が流行語になっているが、実際には企業の平均定年57歳で退職する労働者は1000人中4人にすぎず、大部分が中途で退職したり、リストラで解雇され、定年まで勤めあげる人は少ない。
韓国労働研究院は、「年功重視の賃金体系が維持される限り、定年まで雇用を保証すれば企業の負担は重くなる。生産性に合わせ、高齢者の賃金を引き下げるなどの措置が必要だ」と指摘する。
しかし、退職金が退職直前3カ月の平均賃金で算出されるため、退職金が大幅に減ることになり、労働界は賃金削減に反対の立場をとっている。さらに、定年を延長すれば青年の失業率がさらに深刻になるという懸念もあり、定年延長問題は大きな論争に発展しそうだ。