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2004/10/08

<韓国経済>人民元切り上げでウオン高不可避

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    ウォンが切り上げられれば輸出立国の韓国は大きな打撃を受ける

 今月1日に行われた先進7カ国(G7)財務相会議で、中国の変動為替制度への移行が採択され、中国の人民元の切り上げが事実上確定した。米国など先進国は、大規模な貿易赤字を解消するためには、為替の調整が不可欠と判断しており、韓国ウォンに対しても切り上げ圧力を強めるものと憂慮されている。

 中国は今月1日、1㌦=8・28元の固定相場制を廃止すると公式に発表した。対中貿易赤字を減らすためには、人民元を最低でも20-30%切り上げる必要があるという米国の粘り強い要求がようやく受け入れられたことになる。これと関連して国際機関や海外の金融界では、来年にも人民元が20-30%、ウォンは最大20%(1㌦=900ウオン台)まで切り上げられるというシナリオが形成されている。これによって、韓国経済を支える輸出が、来年は「ウォン高」という大きな試練に見舞われる見通しだ。韓国銀行の関係者は、「米国は、アジアの通貨切り上げが実現されれば、世界の貿易秩序とそこから派生する金融秩序が落ち着くと判断しているようだ」と、警戒感を募らせている。

 政府の為替政策の基本は、輸出拡大のために為替の安定が必要だという立場だ。しかし、問題は為替市場安定のためのコストが膨大で、大きな負担になっていることだ。昨年1年間に韓国銀行が為替市場に直接介入してかかった費用は13兆ウオン (GDPの1・8%)にのぼる。

 さらに発行金利と運用収益の差によって発生する外国為替平衡基金債券(外平債)の損失は3兆ウオン、流動性の調整のため発行する通貨安定証券の利子負担が5兆ウオンに達する。財経部は、このような状況下で、来年の外平債発行規模を今年比16・5%増の21兆9000億ウオンに拡大すると発表した。

 しかし、為替安定努力は、▽市場の不確実性上昇▽外平債・通貨安定債の発行で民間金融の需要が減退▽一部の輸出業種のみに恩恵▽輸入物価上昇で庶民生活を圧迫▽内需型企業の負担増大――という悪循環を招いている。

 それでも政府は、輸出を最優先課題としている。人民元の切り上げで中国経済が沈滞局面に入れば、韓国の対中輸出は確実に減少する。対中輸出は今年1-7月に280億㌦を記録し、前年同期比56・3%増えるなど、急速に伸びる傾向にある。人民元切り上げが実施されれば、企業の輸出採算性悪化は避けられず、深刻な問題になりそうだ。