ここから本文です

2005/05/27

<韓国経済>クローン技術でES細胞

  • keizai_050527.jpg

                 黄禹錫教授         

 黄禹錫・ソウル大教授の研究チームが、難病患者の体細胞と提供を受けた卵子を使って患者自身のクローン胚を作り、あらゆる組織に成長できる胚性幹細胞(ES細胞)の作成に成功した。これによってES細胞を培養して難病治療に応用する再生医療の実用化に向け一歩前進したことになった。

黄教授と文信容・ソウル大教授の研究チームは、米ピッツバーグ大のジェラルド・シャッテン教授の研究チームと共同で18人の女性から提供された卵子185個から31個のクローン胚を複製し、ここから11個のES細胞をつくることに成功した。この研究成果は、米サイエンス誌(電子版)に掲載された。

 科学者たちは、パーキンソン病、脳卒中、認知症、脳脊髄損傷、関節炎、糖尿病などにES細胞を適用すれば、損傷された細胞をES細胞で代替できるとみている。

 黄教授の研究チームは、健康な卵子から核を取り除き、それに脊椎マヒなど各種疾患を持つ患者の体細胞の核を移植、電気刺激などを通じて2つの細胞の融合を誘導した結果、患者と免疫学的適合性を持つ11個のES細胞が誕生した。

 患者治療用のES細胞がつくられたのは今回が初めて。作り出されたES細胞11個は、男性8人、女性3人の体細胞を利用したもので、この中に難病患者3人が含まれている。今回の研究成果でES細胞を利用した難病治療に一歩近づくことになった。ES細胞を利用した難病治療は、「ES細胞作製→細胞分化の誘導→組織細胞の移植→難病治療」の過程を経るが、黄教授はこの第1段階をクリアしたことになる。

 黄教授は、「さまざまな年齢と性別の体細胞を利用してES細胞を作製したことに意味があるが、今回の研究の結果、すぐに臨床試験に入れるわけではない」とし、「これから免疫拒否反応の解決やES細胞の生物学的特性の究明など、課題に取り組みたい」と意欲を示した。

 クローン胚は、子宮に戻すとクローン人間ができるため、ES細胞の研究の是非をめぐって国際社会で論争が起きている。このため黄教授は、「人工卵子」を活用したES細胞の作製技術の開発に力を入れる方針だ。