ワシントンで開かれていた韓米自由貿易協定(FTA)第1回交渉が自動車、医薬品、農業などの核心分野に対する両国の明確な立場の違いを確認して終了した。両国の交渉団は5日間続いた交渉で、計15分野のうち、商品、サービス、金融など11分野で統合協定文の作成にこぎつけたが、統合協定文の60%以上が両国の立場を併記するにとどまり、農業、検疫、繊維、貿易被害救済の4分野では協定文の作成には至らず、妥協点を見い出すまでには紆余曲折が予想される。今回の交渉の概要を振り返る。
米通商代表部(USTR)のカトラー首席交渉官(代表補)が交渉初日に農産物、自動車、医薬品を最難関の課題として挙げたように、交渉ではこれらの分野で両国が一歩も譲らない神経戦が繰り広げられた。
農業は交渉期間を4日と定めていたが、交渉3日目にして統合協定文の作成を断念。コメ開放問題などは第2回交渉以降に持ち越されたが、割当関税(TRQ)やセーフガード(緊急輸入制限措置)などをめぐる見解の隔たりが大きく、協議が難航した。
米側は、最大の関心事である自動車、医薬品分野の交渉が難航すると、日程を短縮した。米は自動車関連で、▽自動車税の排気量基準への変更▽燃費・排出ガスなどの標準化▽外国車に対する消費者の認識向上措置――の3点を要求した。
これに対して韓国は、「税制は地方税収と直結するだけに受け入れられない」と反対の立場を表明、予定されていた2日間の交渉が1日で打ち切られた。
医薬品分野では、韓国の「薬剤費適正化案」(効能に比べ価格が高い薬品を保険対象から除外)をめぐって攻防が繰り広げられた。米国は同案施行に強い懸念と反対を示し、撤回を要求したが、韓国側は健康保険制度の維持のために必要な措置だとし、拒否する姿勢を貫いた。米国側は製薬会社が病院や医師を相手に薬品のPRを行っている慣行にもクレームをつけている。
開城工業団地で生産された製品を韓国産と認めるかどうかも大きな争点となった。韓国が域外加工方式の認定を要求したのに対し、米国は「FTAは韓国と米国間の問題」とし、認めないという主張を繰り返した。知的財産権についても、米は、電子商取引に対する無関税の永久化、著作権保護期間の延長(70年)を主張した。
双方は統合協定文の作成には合意したものの、80~90%の条項で妥結できず、双方の立場を併記するにとどまった。米国が平均9・2%の高い関税をかけ保護している繊維について韓国は、原産地規制の緩和、関税早期撤廃などを主張したが、米国は敏感品目として反対。韓国が要求した相殺関税など貿易救済措置の乱用防止も、米が難色を示し、統合協定文の作成には至らなかった。